宇宙の夜明けを直接観測可能な「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」

「宇宙最初の星の輝き」が特定される、はじまりの光景観測へ一歩前進
(画像=現在開発中のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 / Credit:NASA,NASA Statement on James Webb Space Telescope Launch Readiness(2021)、『ナゾロジー』より引用)

研究共著者のUCLの天文物理学者リチャード・エリス(Richard Ellis)教授は次のように語ります。

「この10年間の技術進歩で、私たち天文学者は宇宙が現在の年齢の4%しかなかった時代まで観測できるようになりました。

しかし、地球大気の透明度の問題でこれ以上の観測は地上の望遠鏡からは困難です。

ハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡もすでに性能の限界に達しています」

宇宙最初の光を灯す宇宙の領域を、研究者たちは発見しましたが、もうこれ以上先の光を見ることは人類技術の限界に達しているのです。

宇宙の夜明けを直接人類が見ることは不可能なのでしょうか?

しかし、それは可能だと研究者たちは語ります。

現在NASA主導で開発中のハッブル宇宙望遠鏡の後継機、「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の精度ならば、宇宙の夜明けを直接観測することが可能だというのです。

「理論家は、最初の星や銀河が形成される前、ビッグバンから数億年間は宇宙が暗闇だったと推測しています。

宇宙に最初の光が灯った瞬間を目撃することは、天文学の主要な探求テーマです。

私たちの観測によると、宇宙の夜明けはビッグバンから2億5000万年~3億5000万年の間に発生したと考えられます。

このとき誕生したと考えられる私たちの研究したような銀河は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で見るのに十分な明るさを持っています」

研究の筆頭著者であるケンブリッジ大学のニコラス・ボルト(Nicolas Laporte)博士はそのように語ります。

そのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は11月に宇宙へ打ち上げられる予定になっています。

宇宙の夜明けを見ることは、この何十年もの間、探求された天文学者たちにとっての聖杯です。

私たち自身も星々が生み出した元素によって作られています。それは私たちの起源を見ることに等しいのです。

初期の星は、激しく燃えて短命だったため、宇宙の夜明けはまるで花火大会のような状況だったといいます。

これはそんな、最初の星と銀河の形成の進化をシミュレーションした動画です。

まもなく、人類はそれを目撃することになるのでしょう。

参考文献
Cosmic dawn occurred 250 to 350 million years after Big Bang(UCL)

元論文
Probing cosmic dawn: Ages and star formation histories of candidate z ≥ 9 galaxies

提供元・ナゾロジー

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