宇宙最初の星の輝きはどこから始まったのでしょうか?

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とケンブリッジ大学の研究チームは、星が初めて形成された「宇宙の夜明け」について、現在知られているもっとも遠い6つの銀河を調べることで、ビッグバンの2億5000万年から3億5000万年後だと特定しました。

この領域は望遠鏡精度の限界にあるため、これ以上の詳細を見ることはまだできません。

しかし、今後稼働するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は「宇宙の夜明け」を直接観測するのに十分な精度を持つと示唆されています。

人類はまもなく、宇宙で最初に輝いた星々の光を見ることになるようです。

この研究の詳細は、6月24日付で科学雑誌『王立天文学会月報(the Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)』に掲載されています。

目次
宇宙で最初の星の光
宇宙の夜明けを直接観測可能な「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」

宇宙で最初の星の光

「宇宙最初の星の輝き」が特定される、はじまりの光景観測へ一歩前進
(画像=ビッグバン宇宙論に基づく宇宙進化イメージ / Credit: NASA / WMAP Science Team,天文学辞典,岡村定矩,ビッグバン宇宙論(2021)、『ナゾロジー』より引用)

宇宙はビッグバンと呼ばれる巨大な爆発によって始まりました。

この後、最初の星が誕生するまで宇宙は暗闇に包まれた暗黒時代を過ごします。

最初の星が生まれたのは、ビッグバンから2億年程度後だろうと予想されていましたが、宇宙最初の星の存在はまだ特定されていませんでした。

今回の研究チームは、現在知られているもっとも遠い銀河の6つを調べました。

「宇宙最初の星の輝き」が特定される、はじまりの光景観測へ一歩前進
(画像=研究された6つの銀河の1つ「MACS0416-JD」が検出された銀河団 / Credit: ESA/Hubble, NASA, HST Frontier Fields、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡によって記録された銀河からの星の光を分析しました。

彼らが着目したのは、光のエネルギー分布に見られる恒星大気中の水素原子の量でした。これにより銀河内の星の年齢を推定することができます。

宇宙最初の星は、主に最初に存在していた元素である水素を燃料に燃えています。

このため、最初の星が歳を取るにつれて水素の反応強度は増していきますが、銀河の年齢が10億年を超えると逆に弱まっていきます。

これは最初の星が、非常に重く急速に燃焼するため非常に短命で10億年程度でどんどん死んでいくからです。

このため、初期宇宙は最初の星々が次々に爆発する宇宙花火大会のような世界だったと考えられています。

「宇宙最初の星の輝き」が特定される、はじまりの光景観測へ一歩前進
(画像=最初の星と銀河の年齢調査は水素の反応をたどって行われた / Credit:canva,ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

こうした指標を使って測定すると、今回調査した銀河はどれも2億歳から3億歳程度だったと推測することができました。

さらにチームは、調査している銀河の宇宙論的赤方偏移を調査しました。

これは宇宙空間の膨張によって光の波長が伸びる現象で、十分に遠い銀河などが対象の場合、これをもとに調べている銀河の距離を推定することができます。

宇宙の距離の推定とはすなわち、調査している宇宙の年齢を推定することと同じ意味を持ちます。

「宇宙最初の星の輝き」が特定される、はじまりの光景観測へ一歩前進
(画像=宇宙論的赤方偏移の概略図 / Credit:天文学辞典,岡村定矩,赤方偏移(2020)、『ナゾロジー』より引用)

地上の4つの大きな望遠鏡(チリのアタカマ大型ミリ波望遠鏡(ALMA)、欧州の超大型望遠鏡、ハワイのケック望遠鏡、ジェミニ南望遠鏡)を使って調査したところ、これらの銀河がある宇宙は、ビッグバンから5億5000万年の領域だとわかりました。

つまり宇宙誕生から5億5000万年後の世界を見ていることになるのです。

ここから銀河の年齢を差し引くことで、最初の星が宇宙に誕生した年代は2億5000万年~3億5000万年だったとわかったのです。