参院選投票日が近づいています。
テレビでも特番が組まれていますね。低い投票率を気にしてか、
「自分の人生を選択する」
「意思表示できる大チャンス」
「日本の大方針を示していただきたい」(※1)
など、投票を促すキャッチコピーもちらほら。
筆者は、選挙とは
「税金(等)の使い道を決めること」
と考えています(税金等としたのは、社会保険も含めるため)。
国民から預かったお金を、外交や経済対策、社会保障などに、どのように配分するか。「間接的」ではあるけれど、その使い道を決めるものである、と。
その視点からすると、投票所に行く人が少ない=投票率が低いのは当たり前のことのように思うのです。多くの人は「税金を払っている」という実感がないからです。
所得税や住民税、社会保険などは、源泉徴収(=天引き)されています。そのため、給与明細で、見るのは「差引支給額」だけ。天引きされた「税金等」は意識しない。払っている実感がわかず「痛税感」も弱い。結果、税金の使い道への関心も低くなる。
一方、税金等を強く意識せざるを得ないときがあります。会社を辞めたときです。一時的に失職状態になったとき届く、地方税や社会保険の納付書。これまで、源泉徴収されていた額の大きさに驚いた人も多いはず。
「こんなに、たくさん払っているのに『財政赤字』って、いったいどんな使い方しているんだ?」
源泉徴収ではなく、自分の財布から払う(納める)ことで、はじめて生ずる疑問、疑念、そして「怒り」。もっと多くの人が、この「怒り」を感じるべきではないか?「怒り」で投票する人が増えれば、投票率は大幅に上がるはず。ならば、源泉徴収をやめ、確定申告(申告納税)に切り替えてはどうか?
「やだ。面倒くさい」
給与所得者の多くが、こう答えるのではないでしょうか。会社が全部やってくれるのに、なんで、わざわざ自分でやらなければならないの?と。
今回は、源泉徴収について考察します。
かねてから問題視されていた制度
源泉徴収が納税意識を低下させている。この指摘は目新しいものではありません。
経営コンサルタントの大前研一氏は、1996年の著書で以下のように述べています。
日本人は年貢みたいな感じで納めて、そのあとのことを気にしないというクセがついているのでしょうか。 -中略- 税金というものは、一度もらってから払うというふうにすると心理的抵抗がありますから、(政府が)制度的に天引き(源泉徴収)をしてしまうということは、それなりに巧妙です
(税金って何だろう-哲学のない税制が日本をダメにする-ダイヤモンド社)
また、アゴラ研究所所長の池田信夫氏も、2016年4月のニコニコ超会議にて以下のように指摘しています。
「サラリーマンだと源泉徴収で天引きされるでしょう。だから、納税者意識が薄いんだよね。自分がいくら税金払っているか、おそらく、ほとんどのサラリーマンは知らない、と思うんですよ」
【言論アリーナ】「今年生まれた赤ちゃんの人生はどうなる?」
こういった指摘に、日本税理士会連合会は、2020年12月「源泉徴収制度のあり方について」にて以下のように述べています。
源泉徴収制度及び年末調整制度によって大多数の給与所得者の申告機会が失われており、そのことが国民の税制に対する関心を低下させ、結果として納税意識の欠如に繋がっているという指摘がある。(中略)給与所得者を含め、広く確定申告を行うことができることとすれば、一定程度に解消できる問題であると考えられる。(中略)税務行政のデジタル化がさらに進展し、確定申告手続が一層容易になることを前提に、将来的には給与所得者が確定申告によって自らの税額を精算する方法を検討する必要がある。
源泉徴収制度のあり方について|日本税理士会連合会・税制審議会
デジタル化の進展など前提条件はあるものの、源泉徴収から確定申告へ移行することにより納税意識は高まる、ということは認めています。