真っ黒い仲間たちの中で、鮮やかなオレンジの体毛が目を引くアザラシの子ども。
これは、ロシアのオホーツク海沿岸で最近目撃された光景です。
いわゆる「アルビノ」の個体であり、専門家によると、アザラシでアルビノが生まれる確率はわずか10万分の1程度とのこと。
また追跡調査をするうち、アルビノアザラシの子は、目立つ体色のせいで仲間に敬遠されていることが分かってきました。
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アザラシ版『みにくいアヒルの子』
野生のアルビノは危険がいっぱい
アザラシ版『みにくいアヒルの子』
今回調査を担当する生物学者のウラジミール・ブルカノフ氏の報告によると、「アルビノアザラシは集団から完全に追い出されたわけではないが、敬遠されている兆候が見られる」ようです。
仲間はどこかよそよそしく、密に触れ合おうとはしません。やはり、自分たちとは違う体色に戸惑っているのでしょうか。
この光景は、アンデルセンの有名な童話『みにくいアヒルの子』を思い出させます。
一方で、ブルカノフ氏は「今のところ食欲は旺盛で、動きも活発ですし、母親からミルクを与えられる様子も確認されている」といいます。
調査チームは現在、アルビノアザラシを追跡観察しているところで、今後、集団から完全に排除された場合に備えて、保護の準備をしています。
野生のアルビノは危険がいっぱい
アルビノは、メラニン色素を作る遺伝情報が欠損しているため、通常の体色を先天的に失っている個体を指します。
これに似たものとして「リューシズム(白変種)」がありますが、こちらは遺伝的欠損ではなく、メラニン量の減少が原因です。そのため、瞳の色は元の色が維持されます。
リューシズムについては、過去に黄金色のカメが発見されたことがあり、そちらで解説しています。
発見されたアザラシには、瞳に明らかな色素の欠損が見られ、アルビノで間違いないとのことです。
アルビノは、視力が低下する傾向が見られ、野生では将来的な繁殖行動に失敗する可能性が高くなります。
また、体色が目立つ分、サメやシャチといった天敵に狙われやすいので非常に危ない状態です。仲間たちは、それを本能的に知っているゆえに敬遠しているのかもしれません。
いずれにせよ、野生でアルビノが生き残るのは至難のワザです。