人間の赤ちゃんはお父さんやお母さんの顔を見ると自然に笑みを浮かべます。
さらに近年の研究により人間だけでなくサル、犬、ニワトリなど様々な動物が親の顔のような3つの点(目、目、口)からなる模様に惹きつけられることが明らかになってきました。
親の世話を受ける種族にとっては、自分を保護してくれる親を認識するため、このような顔型への親和性があると考えられています。
しかし、9月14日付けで『PANS』に掲載された研究によって、顔型への親和性に親子の絆は必ずしも必要ないことが示されました。
これは今まで考えられていた動物の親子関係に大きな打撃を与える結果となります。
なぜ動物は顔に惹きつけられるのでしょうか?
目次
顔に惹きつけられる理由は「親子の絆説」に疑問
顔への親和性は「親子の絆」を超越する
顔に惹きつけられる理由は「親子の絆説」に疑問
人間だけでなく、親に育てられる多くの動物は3点からなる顔の模式図に引き寄せられる性質を持っています。
これまで、この顔型に対する親和性は親子の絆を維持するために動物が身につけた、愛の生存戦略だと考えられてきました。
しかしイギリス、ロンドン大学クイーン・メアリー校のヴェルサーチ氏は、この如何にも心温まる説に、ふと直感的な疑問を感じました。
顔型への親和性は、確かに親子の絆を維持する方法であるとも解釈できますが、親以外の動物全般に注意を向けるための、認識システムである可能性も十分に考えられたからです。
そこでヴェルサーチ氏は、親の保護を受けずに育ち、同族同士との接触も嫌う、孤立を好むカメに3点からなる顔型をみせる実験を思いつきました。
もし顔型への親和性が親子の絆の獲得によって生じた能力ならば、産まれてから死ぬまで親の顔を一度もみないカメには、顔への親和性は不要な能力のはずです。
親子の絆が存在しないカメは、いったいどんな反応を示したのでしょうか?
顔への親和性は「親子の絆」を超越する
実験にあたっては、上の2つの動画のように、3点からなる顔型とランダムな3点のどちらにカメが引き付けられるかが調べる極めてシンプルな方法が選ばれ、5種136匹のカメに対して調査が行われました。
その結果から驚くべき事実が判明。親子の絆が存在しないカメであっても、3点からなる顔型に強く引き付けられることが判明します。
もちろん実験に使われたカメは生後間もない個体であり、生育中に人間との接触はありませんでした。
それでもカメは、実験時間の実に70%を顔型の近くで過ごしたのです。
この事実は、顔型に対する親和性は親子の絆といった狭い範囲だけで起こる現象ではなく、爬虫類と哺乳類の両方の先祖にさかのぼる非常に古く、かつ一般的な動物認識システムであることを意味します。