製造部門化する食品メーカー

一方、PBの製造を請け負う食品メーカーは、「小売の製造部門」という立場になりかねません。

NBに比べPBの利益率は大幅に低い、と言われています。にもかかわらず、受注するのは「量」が確保できるから。受注量確保により、売上高と操業度を維持できるからです。

もし受注しないと、小売との関係が悪化し、自社の商品棚が減らされてしまうかもしれない。ただでさえ、PB増で減ってしまったNBの棚を、他社NBと奪い合わなければならない。ならば、利益率が低くても、受注したほうが「まし」。「断る」企業が少ないのは無理もないことでしょう。

では、食品メーカーはPBにどう対処していけば良いのでしょうか。

PB受注を知名度向上に活用

PB受注を、知名度向上に活用している食品メーカーがあります。埼玉県朝霞市の「武蔵野フーズ(株式会社武蔵野フーズ )」です。

武蔵野フーズは、セブンイレブンに調理パン等を毎日約140万食納入。中でも、2013年より納入している「金の食パン」は、NBより高い価格設定と無添加であることから大きな話題に。現在でも人気が高く、2020年には2年連続となるマザーズセレクション大賞(※3)を受賞しています。

こういった商品をウェブサイトに掲載(※4)。向上した知名度を活用し、さらなるOEM(※5)やPB製造を受注。平行して、食事宅配業「健康宅配」など、事業多角化も行っています。

元請からの仕事を受注しつつ、自社の知名度(ブランド価値)を向上させ事業多角化や独自商品の開発を行う。これは、製造業の「脱下請戦略」そのものです。

また、2020年4月以降、改正食品表示法施行により、PB商品の製造元が明記されることとなりました。パンや菓子などの裏にある「製造所」欄に自社名が表示される。これは、食品メーカーにとって「好機」です。

今後は、PB製造を行っていることを訴求し、知名度を向上させる食品メーカーが増えてくるものと思われます。