スーパーやコンビニの食品棚が様変わりしつつあります。

頻繁に買い物する方ならお気づきでしょう。プライベートブランド(=Private Brand 以下 PB)の占める割合(PB構成比)が、大幅に増えているのです。

西友(合同会社西友 以下 西友)は、「みなさまのお墨付き」などPB構成比の目標を“2022年に20%”から“2023年に25%”へ上方修正しました。ファミリーマート(株式会社ファミリーマート)も、「お母さん食堂」など複数あったPBを、「ファミマル」に統合。PB比率を、“2024年までに35%以上”に引き上げます。店頭に並んでいる商品の、4分の1~3分の1がPBに置き換わることになります。

食品メーカーはプライベートブランドの工場になるのか
レトルトご飯の棚は、PBが3分の1程度を占める(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

食品メーカーの作る商品(ナショナルブランド 以下NB)の割合は、大幅な減少を強いられそうです。

PBの拡大は、食品メーカーにどのような影響を及ぼすのか。西友のPB「みなさまのお墨付き」をモデルに考察します。

これまでのPB戦略

かつて、西友の大豆製品の棚でPB戦略が展開されました。

当時、棚の多くを占めていたのは「マルヤナギ」(株式会社マルヤナギ小倉屋 以下マルヤナギ)の「蒸し大豆」でした。2004年に、日本で初めて、“袋入りの蒸し大豆”を開発・販売した食品メーカーです。

それ以前の、袋詰め大豆製品は、フジッコなどに代表される“水煮”が主流。“蒸して”袋詰めした「蒸し大豆」は画期的でした。水煮大豆や納豆のような面倒さが無い。そのままでも、サラダに入れても食べられる。その手軽さゆえ、売れ行きは好調だったようです。

マルヤナギのウェブサイトでは「蒸し大豆」市場開拓の苦労がうかがえます。

(2004年の)発売当初から、マルヤナギの社員が直接店頭に立ち、蒸し豆のおいしさや栄養価値を伝える試食販売を続けてきました。その数はなんと、15年で累計5,000店舗以上。これからも、蒸し大豆を知ってもらう、食べてもらうために活動を続けていきます。
蒸し豆売上No.1ブランドはマルヤナギ! | 蒸し大豆とは。

「蒸し大豆」の市場での認知度が高まったころ、西友がPB化。「みなさまのお墨付き 蒸し大豆」の販売を開始します。

結果、棚の多くを「みなさまのお墨付き 蒸し大豆」が占めるようになり、マルヤナギの商品は大幅に減少。現在は、「蒸し大豆」以外の「蒸しあずき」や「蒸し黒豆」などを販売するに留まっています(2021年11月現在 ※1)。

食品メーカーの開発した商品のうち、売れそうなものをPB商品化し、安価に販売する。

「うまい(ずるい)」やり方です。これが、今までのPBでした。

現在のPBは違います。NBと同品質・低価格であることに加え、独自に高付加価値商品の開発を行う。「うまい(ずるい)」から「手強い」に進化しています。

新しいPB戦略

西友は9月末に新たなPB戦略を発表しました。

生産段階や「原材料」まで踏み込み、付加価値を加えた「独自商品」の開発を行うことが、我々がめざしている姿です。
西友、プライベートブランド「みなさまのお墨付き」に関する戦略を発表

「原材料」と「独自商品」。上流工程まで範囲を広げた、その戦略は、西友のPB商品のひとつ、「オトナのお墨付きおやつ バームクーヘン」(以下 お墨付きバーム)に反映されています。

スーパーのお菓子コーナーに置かれている、袋詰めのバームクーヘンは、味が良くない。一方、コンビニのスイーツコーナーに置かれているバームクーヘンは、カロリーが高い(250~350キロカロリー程度)。

お墨付きバームは、その中間を狙ったかのような商品です。

食品メーカーはプライベートブランドの工場になるのか
10月末には在庫があったお墨付きバーム(左) 11月には品切れが3日以上続いている(右)(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

“ブルターニュ製造発酵バター”を使った味は、コンビニスイーツと同等かそれ以上。バームクーヘンの老舗“ユーハイム”の商品に「肉薄している」と言って良いほど。また、サイズを小さくすることで、1個120キロカロリーと低カロリーに抑えています。味と手頃なサイズは消費者テスト(※2)でも好評です。

原材料調達から商品開発まで行う。これはもう、小売ではなく「メーカー」です。