「誤算」といえばそれまでだが、ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵攻はあまりにも多くの「誤算」を生み出した。プーチン氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)接近、西側傾斜を阻止するためにロシア軍をウクライナに侵攻させたが、戦争勃発から4カ月が経過しても、プーチン氏の目的は実現できなかった、というより全く逆の結果をもたらしている。

NATOを拡大強化したプーチン氏:EUはこれまでにないほど結束
(画像=マドリードで開催されたNAO首脳会談に参加した面々(2022年6月29日、NATO公式サイトから)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

プーチン氏の狙いは見事に外れた

欧州連合(EU)はウクライナを侵攻したロシアに対してこれまで経済・金融制裁を実施。ドイツ南部バイエルン州のエルマウで開催された先進7カ国首脳会談(G7サミット)にビデオ参加したウクライナのゼレンスキー大統領はEU側に「7弾目の制裁を実施すべきだ」と強く要請。

EUの盟主ドイツは従来の対ロシア融和政策を排除し、軍事強化に乗り出し、戦後から続けてきた紛争地への武器輸出禁止を破棄し、ウクライナに重火器を供給してきた。27カ国から成るEUの弱体化を図ってきたプーチン氏の狙いは見事に外れ、EUはこれまでにないほど結束を固めてきた。

プーチン氏の大誤算はNATO30カ国が対ロシア政策でその軍事強化、拡大に乗り出したことだ。マドリードで29日から開催されたNATO首脳会談でストルテンベルグ事務総長は、「プーチン大統領のウクライナとの戦争はヨーロッパの平和を打ち砕き、第2次世界大戦以来、ヨーロッパで最大の安全保障危機を引き起こした」と指摘し、ロシアに対して2010年の戦略概念であった「戦略的パートナー」から「同盟国の安全とユーロ大西洋地域の平和と安定に対する最大かつ最も差し迫った脅威」と変更し、ロシアと戦うウクライナをさらに支援することを約束した。

また、緊急時派遣軍をこれまでの4万人規模から30万人とほぼ4倍強に拡大、東部(ポーランド)と北部への軍事強化の方針を決定している。

(NATOは今回、ウクライナに地雷、化学的および生物学的脅威に対抗するための通信、燃料、医薬品、防弾チョッキおよび装備、携帯型アンチドローンシステムなどを新たに提供する)

NATOの中核、米国のバイデン大統領は、「米国は、ヨーロッパでの部隊のプレゼンスを拡大する。私たちは同盟国とともに、NATOがあらゆる方向から、あらゆる地域、陸上、空中、海上で脅威に対応できるようにする」と強調、米国がNATOとの協調関係を深めていく意向を表明している。