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脊椎動物化に必要な遺伝子を抜き取るとヤツメウナギが無脊椎化した
種の起源を探る
脊椎動物化に必要な遺伝子を抜き取るとヤツメウナギが無脊椎化した
遺伝子を引き抜くにあたっては、近年の遺伝子書き換えの主流となりつつある「CRISPR(クリスパー) 」を用いました。
CRISPRは大腸菌など原核生物の獲得免疫のシステムの一部として発見された機構であり、2012年以降になって遺伝子書き換えに応用可能であることが発見された最新の生物工学の技術です。
スクェア氏らは早速、CRISPRを用いて、ヤツメウナギからエンドセリンの遺伝子を取り除いた変異体を作成してみました。
結果は驚きでした。
エンドセリンの遺伝子を失ったヤツメウナギは頭蓋骨をはじめとした骨や複雑な末梢神経、高度な構造を持つ心臓といった脊椎動物に特有の体の特徴を失い、無脊椎化してしまったのです。
上の図では、頭蓋骨がなくなって首無し状態になってしまったヤツメウナギが写っています。
複数の遺伝子の影響がからみあって脊椎動物が生まれたと考えていた多くの研究者たちにとって、単独遺伝子の削除が脊椎動物を無脊椎化させるという結果は衝撃でした。
種の起源を探る
また今回の実験で確認されたヤツメウナギの先祖返り(無脊椎化)は、進化を後ろ向きに進めた珍しい例と言えるでしょう。
同じような手法が他の系統発生の探索に用いられれば、様々な種をうみだすきっかけとなった遺伝子を特定できるようになります。
ただ人間の起源となると、倫理的な問題が立ちふさがる可能性がでてきます。
人間とサルの垣根を調べるには、人間の受精卵の遺伝子を書き換えてサル化させるか、サルの受精卵を書き換えてヒト化させる必要があるからです。
参考文献
eurekalert
/ written by katsu
提供元・ナゾロジー
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