経産省と国交省が進めていた洋上風力発電をめぐって、いったん決まった公募入札のルールが、1回目の入札結果が発表されてから変更される異例の事態になった。

ゲームが始まってからルールを変えた

これは2020年から始まった合計4500万kWの大プロジェクトで、2021年12月に最初の3件の入札結果が発表されたが、その結果に業界は驚いた。

洋上風力の入札が始まってからルールを変えた再エネ議連
(画像=山家公雄氏の資料、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

第1回入札の評価点と価格

事前の予想では早くから参入を表明していたレノバや日本風力開発などが落札するとみられていたが、結果は三菱商事グループが11.99円~16.49円/kWhと他社に5円以上の差をつけ、3件すべてを落札したのだ。

これでレノバの株価は6000円台から1200円台に暴落し、業者は政治家を使って巻き返した。再エネ議連の柴山昌彦会長は「毎週、議連の会合に役人や業者を呼んで、入札の問題点等について聞き取りを行ってきました」と認める。

再エネ議連が毎週、圧力をかけた成果で、5月に入札ルールが変更され、6月に行われる予定だった第2回の入札は来年3月に延期され、審査方法も変更された。野球でいえば、1回の表で負けたチームが審判に文句をつけ、1回の裏から自分が勝てるようにゲームのルールを変えたようなものだ。

「価格」から「迅速性」に重点を移したルール変更

その最大のポイントは、三菱商事グループの最大の強みだった価格のウェイトを下げることだ。全体で240点のうち、価格点が120点というのは変わらないが、業者の出した価格が最高評価点価格以下の場合は一律120点と評価することになった。この「最高評価点価格」は未定だが、たとえば20円/kWhと決めれば、三菱商事もレノバも同じ120点となる。これでは入札とはいえない。

そして事業実施能力80点の中でも事業計画の迅速性に重点が置かれた。これによって早くから地元工作をしていたレノバが有利になるが、肝心の入札は半年延期されるという支離滅裂ぶりだ。

洋上風力の入札が始まってからルールを変えた再エネ議連
(画像=経産省の資料、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

こうした一連の工作を仕切ったのは、レノバ会長の千本倖生氏だ。彼はNTT出身だが、第二電電やPHSやイーモバイルなどで政界工作をやった「政商」である。事業としてはほとんど失敗だったが、会社と一緒に電波を売却して大もうけした。