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今度は逆にヒドラにとっての「睡眠薬」を脳のある動物に試してみる
睡眠は脳の誕生以前から存在する古いシステムだった

今度は逆にヒドラにとっての「睡眠薬」を脳のある動物に試してみる

“脳が無い動物でも眠る”と判明! 睡眠の起源はどこにあるのか?
(画像=ヒドラに存在するPRKG1という遺伝子を制御すると哺乳類や昆虫の睡眠時間が延長される / Credit:Science Advances、『ナゾロジー』より引用)

ヒドラが睡眠不足に陥るときに働く遺伝子の中には、これまで知られていない未知のものが含まれていました。

そこで研究者たちは、ヒドラにとっての睡眠にかかわると遺伝子を、今度は逆に脳がある動物(ハエ)で制御してみることを思いつきます。

もし脳が無い動物と脳がある動物の睡眠が進化的に同質であるならば、脳が無いヒドラで発見された睡眠の仕組みを逆輸入することで、脳がある生物の睡眠を制御できるはずだからです。

実験を行った結果、予測は当たりました。

ヒドラで睡眠にかかわることが発見された遺伝子を制御すると、ハエでも同じように睡眠時間の延長や短縮が起こることが判明したのです。

睡眠は脳の誕生以前から存在する古いシステムだった

“脳が無い動物でも眠る”と判明! 睡眠の起源はどこにあるのか?
(画像=脳が無くても動物は何億年も前から眠ってきた / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究によって、睡眠は脳の有無にかかわらず、動物にとって普遍的な現象であることが示されました。

この事実は「睡眠」は、地球上の生物が脳を持つようになる(5億年前と考えられる)以前から存在した、非常に古いシステムであることを意味します。

つまり「脳があるから睡眠が必要になった」わけではなく、神経をもつ動物に元々あった睡眠の仕組みを、中枢神経が後から自分の都合のいいように取り込んでいたのです。

また今回の研究は、新たな睡眠薬の開発につながる可能性もあります。

睡眠の仕組みが脳の有無にかかわらず存在するという事実は、ヒドラが原始的な睡眠のモデルになる可能性を示しており、ヒドラで新たに睡眠にかかわることがわかった遺伝子が、人間でも働いている可能性があるかもしれません。


参考文献

九州大学


提供元・ナゾロジー

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