2015年に開設された科学解説コンテスト「Breakthrough Junior Challenge」では、毎年、世界中の13~18歳の学生が科学または数学の理論を解説する動画を提出します。
それぞれの動画は、複雑な科学的理論をどれほど魅力的かつ啓発的に、また想像力豊かな方法で解説しているか審査されます。
そして最近、カナダのエコールマクタビッシュ公立高校に在籍する17歳の学生マリアム・セガイ氏が、第6回最優秀賞を獲得しました。
彼女は量子物理学における「量子トンネル効果」の概念を見事に簡素化して解説したのです。
これからセガイ氏の「量子トンネル効果解説」をご紹介します。
目次
「量子トンネル効果とはチートで壁を超えること」であり、電子は二重人格!?
電子は確率の波である
「量子トンネル効果とはチートで壁を超えること」であり、電子は二重人格!?
最初にセガイ氏は、量子トンネル効果をビデオゲームのチート(不正行為)に例えています。
通常、ゲームのルールにより、キャラクターが壁を通過することはできません。しかし、チートコードを導入したキャラクターは簡単に壁をすり抜けます。
このような現象は現実では起こり得ないと思うでしょう。しかし実際には量子レベルで同じ現象が起こるのです。
量子レベル、つまり非常に小さい電子などはトンネルによって壁を通り抜けるような現象を起こします。そのためこの現象は「量子トンネル効果」と呼ばれています。
続いてセガイ氏は量子トンネル効果を解説するため、電子などの小さなものには2つの人格があると述べます。
片方の人格とは「波」であり、もう片方は「粒子」です。
彼らがどこにいるか知りたい時には粒子の人格が現れ、何をしているのか知りたい時には波の人格が現れるというのです。
電子は確率の波である
さらに電子は深刻な関係恐怖症を抱えているので、私たちが彼らの居場所を特定することは難しく、推測する必要があるとのこと。
この状況は電子が2つのサイコロを持っている状況に例えられます。
前提として、サイコロが振られた後でなければ、私たちは電子と出会うことができません。そしてサイコロが振られると目の合計に応じて電子の居場所は確定します。
サイコロによって居場所が決まるわけですから、電子の居場所は確率で表現されます。
例えば図にあるように、すべての組合せのうち、7を取得する可能性は2または12よりも高くなるでしょう。
そして実際の電子は2つのサイコロよりも多くの組合せをもっており、これは確率波として表現できます。
波のピークでは電子を見つける確率が高く、谷部分では電子を見つける確率は低いのです。