目次
シャコのナノ粒子はあらゆる人工材料を凌ぐ「天然サポーター」!

シャコのナノ粒子はあらゆる人工材料を凌ぐ「天然サポーター」!

さらに、この無機物と有機物の組み合わせが、拳の弾性や剛性を高める鍵となっていました。

実験で、低エネルギーのインパクトを与えてみると、コーティングの結晶構造は、ほとんどマシュマロのように変形し、外力がなくなると元に戻り始めています。

一方で、高エネルギーのインパクトを与えてみると、ナノ粒子の結合が壊れて、結晶構造を失くしてしまいます。ところが、硬い結晶構造を一時的に失くすことで(アモルファス化)、クッションのようになり、エネルギーを分散させていました。

超強力「シャコパンチ」は、拳にナノ粒子をまとって”衝撃を吸収する”と判明
(画像=Credit: 磁性・スピントロニクス材料研究拠点,『ナゾロジー』より 引用)
超強力「シャコパンチ」は、拳にナノ粒子をまとって”衝撃を吸収する”と判明
(画像=Credit: Kisailus lab / UCI,『ナゾロジー』より 引用)

この特殊な構造は、柔らかい有機物と硬い無機物の組み合わせによって生まれ、剛性を失うことなく、エネルギーの吸収・分散特性を獲得していたのです。

キサイラス教授は、これについて「金属やセラミックといった大半の人工材料をはるかに凌ぐ構造」と指摘します。

つまり、シャコは最強のパンチ力だけでなく、高性能の自家製サポーターまで備えていたということでしょう。

シャコパンチのコーティング構造は、自動車や航空機、スポーツ産業における新素材の開発に応用できるとのことです。

研究の詳細は、8月17日付けで「Nature Materials」に掲載されました。

A natural impact-resistant bicontinuous composite nanoparticle coating

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功