シャコは、生物界一のハードパンチャーとして有名です。
ハンドスピードは、プロボクサーの時速30〜50キロに対し、シャコは驚異の80キロ超え。威力もハンパではなく、人の指くらいなら簡単に折ってしまいます。
シャコは、自分のパンチ力で関節を痛めないよう手加減しているという研究もあるほどです。
このシャコパンチで、魚を気絶させたり、カニの硬い殻をぶち割ったりしますが、それでいてシャコの拳には傷ひとつ付きません。
その謎を解明するべく、米・カリフォルニア大学は、電子顕微鏡を使って、シャコの拳の秘密に迫りました。
その結果、シャコの拳には、パンチの衝撃を吸収・分散できる「自家製サポーター」が施されていることが判明します。
シャコの拳は「ナノ粒子」でコーティングされていた⁈
研究主任のデビッド・キサイラス教授は「もし私たちが、シャコのパンチ力とハンドスピードで壁を殴り続ければ、拳の方がオシャカになります。しかし、シャコの拳には何のダメージもなく、一体どのような構造をしているのか非常に不思議でした」と話します。
そこで教授と研究チームは、2種類の顕微鏡、「TEM(透過型電子顕微鏡)」と「AFM(原子間力顕微鏡)」を用いて、シャコの拳を調べてみました。
TEMは、電子を当てることで対象を透かして見ることができ、AFMは、対象を専用の探針でなぞることで、表面の微細な凹凸を観察できます。
その結果、シャコの拳は、特殊な構造で結びついた「ナノ粒子」のコーティングが施されていたのです。
まず、ひとつひとつのナノ粒子は、球体状になっており、「柔らかい有機物(タンパク質、多糖)」と「硬い無機物(リン酸カルシウム)」が結合してできていました。
そして、無数のナノ粒子が、組み合わさって特殊な結晶構造を作り、拳の表面を覆っていたのです。