耳鳴りは、アメリカだけで約4500万人を苦しめてきましたが、はっきりとした原因や治療法は見つかっていませんでした。

ところが、アイルランドの医療機器会社Neuromodの神経科学者ヒューバート・H・リム氏ら研究チームは、10月7日付の科学誌『Science Translational Medicine』で、世界初の耳鳴り治療装置「Lenire」を発表しました。

Lenireは患者の耳と舌に刺激を与えることで、耳鳴りの症状を大幅に軽減できたのです。

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治療法がなかった耳鳴り

治療法がなかった耳鳴り

耳鳴りに効く”世界初の治療装置”が開発される! 「舌」を電極で刺激
(画像=耳鳴りの治療は困難だった / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

多くの人が耳鳴りに悩まされているにも関わらず、これまで明確な治療法は存在していませんでした。

なぜなら、ほとんどの耳鳴りは実際に音が鳴っているわけではないからです。

この耳鳴りはしばしば幻肢痛と比較されます。幻肢痛とは、痛みを感じる部位が存在していないのに、脳が勝手に痛みを作り出すというもの。幻肢痛については軽減できるように多くの研究がなされています。

耳鳴りも幻肢痛と同様、外部からの音が入ってきていないにも関わらず、脳が勝手に音を作り出してしまうのでしょう。

このように大まかな耳鳴りのメカニズムは想定できるものの、「なぜ脳が勝手に音を作り出すのか」「どのように耳鳴りをなくすのか」という疑問は完全に解決できていませんでした。

そのため、これまでの耳鳴り治療法の多くは「耳鳴りに慣れる」というものでした。多くの人がエアコンの音や外の自動車の音を意識しないのと同じように、耳鳴りも聞こえているが意識しないように訓練するのです。

しかし将来、こうした対処療法は無くなるのかもしれません。最近、世界初の耳鳴り治療装置が開発されたからです。