ウクライナ問題では22日、「NATO東方不拡大の密約」の存在を肯定する論を書いた筆者だが、24日の全面侵攻を目の当たりにし、プーチンは「『目的』を拡げ過ぎた」、「何と言い繕おうと、急拵えとも思える大義名分はお粗末だし、全面侵攻はやり過ぎだ」、「出口が見通せない」と批判した。
この「出口」に関して、米政治メディア「ポリティコ」が25日、「プーチンの真の狙いは何か?」と題し、「衝撃的な侵攻の後」にプーチンが「どこまで突き進むつもりなのか」を19人の「世界のロシア専門家」に語らせている。とても興味深いので、以下に各人の主張の要約を紹介する。
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E・ファーカス(元米国防総省ロシア・ウクライナ・ユーラシア担当副次官補) 最終目的は、旧ソ連圏全体を支配するための失地奪回主義者の帝国主義的な地球改造。
T・グラハム(ブッシュ政権で国家安全保障会議ロシア担当上級部長) 彼は真意を意図的に欺いてきたので、目標は部外者には判らない。最低でも軍事インフラを破壊し、傀儡政権に置き換えたいのだろう。
A・コレスニコフ(カーネギー・モスクワ・センター上級研究員、ロシア国内政治・政治制度プログラム委員長) 判断は困難。西側指導者の傾聴で十分とも、ドンバス両地域を領地とすることとも考えられるが、きっとキエフ当局を彼の「帝国」の管理下に置き、世界を彼のルールに従って行動させたいのだろう。
R・メノン(ニューヨーク市立大名誉教授、コロンビア大ソルツマン戦争・平和研究所上級研究員) キエフの政府を崩壊させ、ロシアに従順な政府を樹立することを彼は決意した。目的のためには経済的、戦略的、政治的な代償を支払う用意があるようだ。
O・オリカー(国際危機管理グループの欧州・中央アジア担当ディレクター) 誰もが彼に降伏し、彼が正しいと証明され、友好的なウクライナと臆病で再教育された欧州を享受するという選択肢を彼は持っている。だがウクライナの抵抗、制裁が長期に与える苦痛、隣人へのいわれのない残忍な攻撃に対する世界の恐怖を過小評価している。
F・フクヤマ(スタンフォード大フリーマン・スポグリ国際問題研究所シニアフェロー) 狙いは民主主義体制を崩壊させ、モスクワに同調する傀儡政権に置き換えること。短期に全土占領の可能性は低いが、軍事力を破壊し経済的に破綻するまで圧迫する可能性が高い。農産物輸出に必須なオデッサなど港が重要。注目すべきはウクライナ軍がプーチン軍にどう打撃を与えるかで、制裁には賛成だが余り影響を与えまい。
L・シェブツォバ(フィンランドロシア研究センターとリトアニアのサハロフ民主開発センターの理事で「Putin’s Russia」の著者) 目標は、ウクライナを従属させて国家としての地位を引きずり降ろし、ウクライナを締め上げて、欧米に最後通牒を受け入れさせること。つまり、ロシアの地政学的裏庭に干渉しないという欧米の約束を取り付けたいのだ。
K・ストーナー(スタンフォード大の民主主義・開発・法の支配センター所長) 目標はウクライナのロシア吸収。多くのロシア人富豪が豪邸を持つ米英と欧州連合からの厳しい制裁を切り抜けられると彼は予想している。ウクライナの民主主義に対する戦争で、NATO加盟というロシアの不安とは関係ない。彼の最終目的は、独裁的なロシアと台頭する中国が、西側の自由主義覇権に挑戦する多極化した世界を作り出すことであり、その目的は力が正義で、国家主権、個人の権利と自由、人権は誤り、という新しい世界秩序を確立することだ。