治療された原因は酸化ストレスの軽減だった
電磁波が糖尿病を治療する仕組みを解明するにあたって、研究者たちが目をつけたのはインスリンまわりの反応ではなく、酸化ストレスでした。
これまでの研究で、電磁波が細胞内部の酸化ストレスに影響を与えることが知られていたからです。
さっそく研究者たちは細胞と電磁場の関係について調べました。
結果、電磁場にさらされることで、細胞の酸化ストレスの度合いを示すマーカー物質が40%も低下し、逆の還元反応を行う遺伝子が活性化していたことが判明します。
このことは、ある程度の電磁波にさらされることで、ヒトやマウスの細胞は酸化ストレスが減り、結果としてインスリンに対して敏感に反応するようになったことを示します。
また、さらに検証を深めるために、肝細胞のミトコンドリアから磁気を帯びていることが知られている常磁性の物質を除去が行われました。
肝臓のミトコンドリアは、糖尿病と深く結びついていることが知られているからです。
すると興味深いことに、電磁場に感応する常磁性物質を失ったマウスは、電磁場にさらされても糖尿病の治療が行われなくなっていました。
このことは、糖尿病の治療には電磁場だけでなく、電磁場に反応する体内の常磁性物質も必要であることを示唆します。
電磁場と生命活動の深い関係
地球の生命は地球の作る磁場と電場の存在下で進化してきました。
特に電子の授受に伴いプラスとマイナス、N極とS極が生じる酸化還元反応に対して、電磁場は大きく作用し、細胞内部の酸化と還元のバランスを変調させることがわかってきました。
今回の研究では、電磁場による介入が運よく酸化ストレスを減らすと共にインスリンに対する感受性を高め、結果として糖尿病の治療につながることが示されました。
研究に使われた電磁波は低周波の安全性の高いものであり、今後の医療分野での応用が期待されます。
研究チームは今回の技術について特許を申請すると共に、今後より大きく人間に近い動物での実験を行っていくとのこと。
治療法が確立されれば、将来の糖尿病治療はインスリンを注射するのではなく、代わりに電磁場にさらされることが主流になるかもしれませんね。
提供元・ナゾロジー
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