純粋な偶然が大発見につながったかもしれません。
10月6日に『Cell Metabolism』上で掲載された論文によれば、偶然マウスを電磁場に晒した結果、2型糖尿病が治療されたとのこと。
「電磁場が糖尿病を治療する」というと、いかにも怪しげな響きがあるものの、研究が掲載されたのは権威ある『Cell』系列の学術雑誌であり、信ぴょう性は保証されているようです。
また興味深いことに、治療には電場と磁場の両方(電磁場)が必要であり、磁場だけでは逆に糖尿病を悪化させてしまうのだとか。
いったいどんな仕組みで、電磁場が糖尿病を治療したのでしょうか?
目次
発見は偶然だった
電磁場にさらすとマウスもヒト細胞も糖尿病が治療される
治療された原因は酸化ストレスの軽減だった
電磁場と生命活動の深い関係
発見は偶然だった
最初の発見は純粋な偶然でした。
糖尿病の研究を行っていた博士課程の学生であるサニー・ファン氏は、マウスから採血して血糖値を測定する練習をする必要がありました。
ただ研究室には実験用のマウスは沢山いても、練習用のマウスはいませんでした。
そこでファン氏は同僚のカーター氏と共に、他の研究に使われていたマウスを借りてきて、採決と血糖値の測定練習を行いました。
しかし、その測定で奇妙なことが起きたのです。
借りてきたマウスたちは、遺伝子組み換えによって、2型糖尿病を必ず発症するように調整された変異体であったにもかかわらず、測定された血糖値はすべて正常値でした。
測定結果が正しとすれば、可能性は2つしかありません。
すなわち、変異体だと思っていたマウスが正常個体であったか、変異体マウスの糖尿病が何らかの原因で治療されていたかです。
しかし正常個体の疑いは早々に否定されました。
採血された個体を調べた結果、ちゃんと変異体になっていたからです。
そこでファン氏とカーター氏は後者の治療説に興味を持ちました。
というのも、借りてきたマウスは「電磁場が動物の脳と行動に及ぼす影響」を研究するために、強い電磁場に断続的に晒されてきた「特別な」個体たちだったからです。
2人はさっそく、電磁場が糖尿病に対して治療効果があるかをどうかを調べることにしました。
電磁場にさらすとマウスもヒト細胞も糖尿病が治療される
電磁場が糖尿病を治療するかどうかを確かめるために、研究者たちは新たに糖尿病になったマウスに睡眠中、地球の100倍の電磁場にさらしました。
結果、驚きの事実が判明します。
電磁場にさらすことわずか3日間で、マウスの糖尿病が大きく治療された(インスリンが効きやすくなった)のです。
また、他にも興味深い事実が判明します。
電場と磁場の両方(電磁場)に晒されると糖尿病が治療される一方で、磁場だけにさらされた場合は逆に糖尿病が悪化することが判明したからです。
ただこの時点では、電磁場が「マウスだけ」に効き目を及ぼすといった種限定的である可能性もありました。
そこで研究者たちは、シャーレで培養されたヒトの肝臓の細胞に対しても電磁場にさらす実験を行いました。
結果、ヒト肝細胞もマウスと同様に電磁場に反応して、インスリンに対してより敏感に反応するようになっていました。
インスリンに対して細胞の感受性が高くなれば、より少ないインスリンでも効率的に血糖値を下げることが可能となり、糖尿病の治療につながります。
ただ問題は電磁波が糖尿病を治療することはわかっても、その仕組みが不明である点です。