はじめに
本記事は、エネルギー問題に発言する会有志4人(針山 日出夫、大野 崇、小川 修夫、金氏 顯)の共同作成による緊急提言を要旨として解説するものである。
緊急提言の背景と狙い
(1)全世界なエネルギー危機とロシアによる国際秩序破壊の影響
昨年初頭より脱炭素政策による化石燃料開発投資が停滞し、世界同時多発的にエネルギー資源価格が上昇し資源の安定的確保が困難な状況にある。
昨今のロシアのウクライナ侵攻により国際秩序が破壊された結果、EU諸国の現下の最大関心事は国家安全保障の強靭化となった。
欧米は、エネルギー危機の渦中で脱炭素政策とエネルギーの自立化政策の両立へ舵を切り、中核的政策として英仏は原子力発電所新増設計画を決定するなど欧米各国は原子力回帰への動きが鮮明となっている。
(2)我が国の現下のエネルギー事情とウクライナ危機の教訓
3月16日の福島沖地震による電源脱落に伴う瞬時の周波数低下へ追随不足が発生し、3月22日には気温低下/需要増に対する供給力不足により緊急電力逼迫警報が発令された。
経済産業省は、足元でコロナからの経済回復でエネルギー需要が増加の中、燃料調達リスクがかつてないほど深刻で、今夏は凌げても冬場は首都圏で予備率が一番厳しく全国レベルでも厳しいと発表した。
電力安定供給危機の遠因である電力自由化政策の適切な見直しが必要ともいわれている。
(3) 我が国のエネルギー政策の現状と課題
我が国は2050年カーボンニュートラル達成を目指し、原子力依存度の低減、再生可能エネルギー(再エネ)主力電源化を国策と定め、その道筋として第6次エネルギー基本計画(エネ基)を制定した。
第6次エネ基は、我が国のエネルギー安全保障環境の実情、即ち資源小国・経済産業大国・世界有数の原子力技術保有国・他国とのエネルギーネットワーク無しの島国・陸海ともに再エネ適地は僅少等の実態を見据えていない。
今こそ国内外の現実を見据えてエネルギー安定供給の『一丁目一番地』である電力安定供給体制の構築に向け腹を括る時である。電力安定供給無くして国民生活や産業・技術を守る事は出来ないことを強く訴えたい。