目次
ワームホールは安全に通行できる?
結局ワームホールに実用性はあるのか?
ワームホールは安全に通行できる?
ワームホールを安定させる方法が示されましたが、この方法で発生する負のエネルギーは大きいと言ってもそれは量子レベルで見た場合です。
この方法ではワームホールはミクロサイズでしか存在できず、トンネルの距離も非常に短距離しか結べません。
では宇宙船が入れるような大きいワームホールは作れないのでしょうか?
今回の研究は、この問題をランドール・サンドラムモデルを利用すれば解決できるということを示唆しています。
「ワープする宇宙」などの書籍で有名な物理学者、リサ・ランドールらのモデルは、物理学を代表する4つの力のうち重力が非常に微弱である問題を説明するもので、宇宙を5次元時空として記述し、重力はその余剰次元から漏れ出てくる力なので、非常に弱いのだと説明しています。
この5次元時空は、通常私たちが探索するより低いエネルギーの物理学で記述される可能性が高いとされていて、この考えを取り入れれば、既知の物理学に強く相互作用する質量のない場を追加できるのだといいます。
このためには負のエネルギーの発生が必要なため、これが大きなワームホールを支える力になるかもしれないのです。
こうして発生した大きなワームホールは、「外から見た場合ブラックホールと見分けがつかないだろうが、必要な要件が揃えば通過は可能だ」と研究者たちは主張しています。
結局ワームホールに実用性はあるのか?
もしワームホールが通過可能だとすると、これは宇宙をワープするための手段として使えるのでしょうか?
ハーバード大学の Daniel Jafferis氏はこの問題について、安定したワームホールが可能だったとしても、そこを通り抜けるためには通常空間の移動よりも時間がかかるだろうということを以前の研究から示しています。
これに対して今回の研究者らは、ワームホールを通過する旅行者視点では、時間はほとんど経過しないだろうと考えています。
彼らによると、一般相対性理論に従えば、光速で移動する人間は時間の拡張(時間の流れの遅延)を経験するため、1万光年の距離をワームホールで通過した場合でも、旅行者の体感時間は1秒程度だろうといいます。
ただし、ワームホールの外にいる我々の目から見た場合、彼らがワームホールを通過するのにかかる時間は、1万年以上に見えるとのこと。
また、ワームホールの通過には重力が宇宙船を加速させるため、一切燃料を必要としないということも述べられています。
実用的かどうかは怪しい結果ですが、他にもこの研究で示されたワームホールには欠点があります。
まず今回の研究で示された通過可能なワームホールは、自然に形成されるメカニズムが存在しないため、負のエネルギーを利用して誰かが設計して作らなければ実現できません。
そして理論的には可能であると示されているものの、前提とされている時空構造がきちんと現実に存在している必要があります。
やはりワームホールを未来の移動手段にすることは非常に困難なようです。
しかし、SFの主要なメカニズムを現実の世界で真面目に検証してくれる研究は、とても興味深いものです。(ほとんど何を言っているのかわからないとしてもね…)。
参考文献
universetoday
提供元・ナゾロジー
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