引き締まった胴部をつくりたい。胴部だけは薄く仕上げたい。そう願って懸命に腹筋のワークアウトをやっているがなかなか思うようにいかない。その理由は腹部の脂肪にある。特に脂肪が落ちにくいのが腹筋下部だ。腹筋下部はへその下に位置する部分で、へそ上まではそれなりに見栄えがするのに、へそ下に視線を移すとポコンと出てしまっているという人は意外に多い。数百回のシットアップやクランチを毎日のようにやっているのに、なぜ腹筋下部だけ引き締まっていかないのか。それは、この部位の脂肪を運動によって落とすことができるという考え方そのものが間違っているからである。

文:Spencer Smith, CSCS and Ken Woodman CSCS
翻訳:ゴンズプロダクション

部分減量については賛否両論があるが、少なくとも腹筋下部についての部分減量は、特定の種目を行うだけでは解決しない。ただし、胴部全体を強化すると状況は変わってくる。胴部には複数の筋肉があるが、腹筋下部はその中でも筋力が一番弱い。しかも、弱い部位なのに一般的な腹筋種目では運動への参加率が低いのである。引き締まった胴部をつくるなら、突き出た下腹部はあり得ない。絶対に改善が必要である。つまり、下腹部を運動に参加させ、この部位に強烈な刺激が伝わる種目を選択しなければならないのだ。では、具体的にどのような種目があるのか。以下に腹筋下部を効果的に刺激する10種目を紹介しよう。

【ペルビック・ティルト(骨盤を丸める運動)】

この種目は主に下背部や殿筋を刺激するものだが、正しく行えば下腹部強化にも役立つ。一見すると殿筋やハムストリングの種目だが、見よう見まねでやってみて殿筋とハムにしか刺激が行かないようなら、下腹部のための種目にはなっていない。下腹部を鍛えるためのペルビック・ティルトでは意識的に腹をへこませ、脊柱を床に平らに押しつける姿勢を保ちながら、骨盤だけを可動させるようにレップを繰り返す。以下のやり方で実践してみよう。
●スタート: 床に仰向けになり、膝を立てて両足の裏を床につける。脊柱は床に平らに伸ばすが、下背部の自然なアーチは保つこと。この姿勢がペルビック・ティルトのスタートポジションだ。
●動作: 腹筋下部をギュッと緊張させ、へそを体の内側にへこませる。このとき、同時に骨盤を丸めるように意識しよう。こうすることで、脊柱が床にぴったりつくはずだ。なお、この動作を行うときに脚の力を使ったり、殿筋を床から持ち上げてしまわないこと。このことを意識しないと、脚に力を入れたり尻を床から浮かせたりしても見た目は同じ動作になってしまう。しかし、ここで行う「骨盤を丸める」動きはあくまでも腹筋下部(下腹部)を強化するためのものだ。脚の力を使い、尻を床から浮かせるとハムや殿筋に刺激が分散されてしまうので注意しよう。
●初級者の場合:この種目はしっかり腹筋下部(下腹部)を意識して、この部分に刺激が伝わるように行う必要がある。それらしい動作をするのではなく、正しくターゲット部位に刺激を与えること。また、トレーナーの中にはカーフをベンチ台に乗せることで、この種目を楽に行えるとアドバイスする人もいるが、腹筋下部を強化するために「楽に行えるやり方」をマスターする必要はない。的確に腹筋下部を刺激し、この部位に効かせられるようになってほしい。どうしてもうまくいかない場合はバキュームを練習しよう。あるいは、胴部全体の筋力を高めるための種目を積極的に行ってから、改めてペルビック・ティルトに挑戦してみるのもいい。胴部の筋力が向上すると、腹筋下部も意識しやすくなるはずだ。
●上級者の場合: 上級者になったら、ぜひ難易度を上げてみよう。その場合は、適度な重り(プレート)を腹筋下部に乗せて行ってみる。ただし、腹筋下部をしっかり可動させることができないうちに、プレートを乗せたやり方に挑戦したりしないこと。正確な動きができない状態で負荷を追加すると、たいていは殿筋やハムストリングのための種目になってしまいがちである。その場合、尻が床から浮いてしまうので、負荷を追加するタイミングについては十分に注意しよう。

【Uボート】

これまで実践してきた種目の中には複雑な動作のものもあったはずだが、この種目もなかなか難しい。しかし、正確にできるようになると腹筋下部への刺激を強めることができ、下腹部を形よく引き締める効果は絶大だ。なお、トレーニング歴が長い上級者であっても、この種目に関しては初級者のやり方をまずは確認しておこう。 ●スタート: 床に仰向けになる。脊柱はまっすぐに伸ばし、尻と前腕をしっかり床につけておく。股関節を屈曲させ、床面に対して脚が45度の角度をつくるようにして伸ばす。
●動作: 両膝を揃えて曲げ、腹筋下部をギュッと収縮させ、床面とスネが水平になるように保つ。この状態で両脚を左に移動させ、膝を伸ばしながらU字を描いて右に移動させる。これを繰り返す。
●初級者の場合: 最初のうちは背中全体を床につけ、両腕は体の横に伸ばしておく。こうすると動作中でも体を固定した状態で保つことができる。体がしっかり固定できれば腹筋下部に全神経を注ぐことができる。
●上級者の場合: 初級者のやり方で動作に慣れてきたら、運動の強度を高めるためにV字姿勢で床に座ってこの種目を行ってみよう。V字姿勢を保ったまま動作をするには、よほど胴部を硬く緊張させなければならない。しかも腹筋下部を強く収縮させた状態で、両脚を揃えて左右にU字を描くようにして移動させるのだから、運動の難易度は極めて高いと言える。なお、V字姿勢で行うときは両手を天井に向けて挙げておくようにしよう。