コロナで絆深まり。コミュニティ活動はオンラインで

“タブー”を新しい常識に 日本上陸10周年のフライングタイガーの生き残り戦略とは
(画像=父の日にオンラインで実施したイベント、『DCSオンライン』より引用)

 コロナ禍によるグローバルでの販売不振もあり、2020年11月下旬に米国内の全店舗を閉鎖することとなった。日本でもまた感染拡大に伴い、2020年に約2カ月間、全店舗の営業を停止している。その間「こんな時だからこそ必要なブランド」と多くの声が寄せられたことを受け、急遽、簡易版ECを用意。営業再開後は順調に売上を戻し、コロナを機に2020年6月には、本格的にECを立ち上げたことで、店舗のない北海道エリアの客が増えるなど、意外な副産物もあったという。

 また、コロナをきっかけに深まったのは、ファンとの絆だ。フライングタイガーが他のファスト雑貨と異なる点は、ファンが集うコミュニティ「部活」を結成していること。会員数は2000名まで拡大している。時にはファンが講師を務め、コロナ前は、商品を素敵にアレンジするワークショップなどを店舗のイベントスペースで行っていた。コロナ後は、こうしたイベントをオンラインで行うようになった。たとえば、「父の日」をテーマに、30分ほどインスタでライブ配信を行って手作りギフトを作るなど。同社のインスタグラムのフォロワーは20.6万人(2022年5月現在)。オンラインでイベントを行うことで、全国のファンがワークショップに参加できるようになり、ファンの絆は一層深まった。

タブーを破ってまで押し進めた構造改革

“タブー”を新しい常識に 日本上陸10周年のフライングタイガーの生き残り戦略とは
(画像=松山恭子CEO、『DCSオンライン』より引用)

 また、2021年から始めたのが、利益を生み出すべく商品をコントロールする「リバイ(再生産・再販売)」システムだ。前述したように、フライングタイガーは、毎月新商品が出るという目新しさが魅力だが、それゆえ、その時即買いしなければ二度と同じ商品に巡り会えないという側面もあった。「これまでヒット商品をメディアが取り上げてくださっても、それを見たお客さまが来店した頃には完売してしまうことも多く、お客さまをがっかりさせ、同時に機会損失につながっていた。そこで、本当に必要とされる商品のみデンマーク本社に再生産依頼をかけることで、“売り切れごめん”の業態から一歩前進した」(松山CEO)

 これにより、機会損失リスクを低減するだけでなく、PR効率の向上にもつながっているという。例えば、ヒット商品の「スマートフォンプロジェクター」(1,600円・2022年5月現在)。2020年10月~2021年1月まで販売したところ、約1万本を完売した。通常ならこれで終わるところを、再生産依頼をかけ、2021年4月~2022年1月までに2万本以上を売り上げている。ちなみにヒット商品は、1,000円以上と販売価格が高いものが多く、リバイの仕組みを構築することで、薄利多売のビジネスから転換することも視野に入れているという。

“タブー”を新しい常識に 日本上陸10周年のフライングタイガーの生き残り戦略とは
(画像=スマートフォンの画面を拡大してくれるスマートフォンプロジェクター、『DCSオンライン』より引用)

 本社が長年貫いてきたモデルは、「商品は、売り切りごめんの新商品か、定番商品の2種類のみ」だ。しかし、コロナ危機のように、誰も想像しなかった事態に陥った際に変容できないものはやがて淘汰される。フライングタイガーの日本舞台は、長年守られ続けた“掟”を破ってまで構造改革を行い、勢いを取り戻したのだ。

文・両角晴香/提供元・DCSオンライン

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