水面から跳ね上がる水滴(水柱)を落下させているのは重力ではないようです。
3月5日に『Physical Review Fluids』に掲載された論文では、液体表面に落ちた水滴の「跳ね上がり」が、重力の20倍の力で引き戻されていたことが示されました。
しかし、いったい何が原因で水柱に20Gもの力が加わっていたのでしょうか?
目次
水面から跳ね返る水滴は重力の20倍の力で引き戻されていると判明
表面張力が水柱を引き戻していた
水面から跳ね返る水滴は重力の20倍の力で引き戻されていると判明
CMなどで見かける水面に落ちる水滴は、上向きに跳ね上がる水柱を形成します。
この跳ね上がり現象は一時的に生じた「衝突クレーター」を埋めようとする力が、中心で衝突を起こし、上に向かうことで発生します。
しかし基本原理はわかっていても、詳細な過程は解明されていませんでした。
特に、跳ね上がった水柱の速度については、誰も正確な知識を持っていなかったのです。
そこでアムステルダム大学の研究者たちは、レーザー光とハイスピードカメラを使用して、跳ね上がりの過程を分析することにしました。
結果、非常に奇妙な事実が判明します。
これまで跳ね返りを起こした水柱が、再び落下する原因は重力だと考えられていました。
しかし観測の結果、水柱は伸びる過程(特に初期)において重力よりも5~20倍強い力で水面に引かれていることが示されたのです。
また水柱が限界高度に達した後も、重力の2倍の加速度で落下することが判明します。
この結果は、跳ね返りによって生じた水柱が、重力とは異なる力によって水面に引き戻されていることを示します。
その力とはいったい何によって生じていたのでしょうか。
表面張力が水柱を引き戻していた
跳ね返りによって生じる水柱を引き戻している力は何か?
謎を解明するために研究者たちが注目したのは表面張力でした。
表面張力とは、水滴が小さくまとまろうとする力であり、分子同士が引き合うことで発生します。
大量の液体に対して表面張力が与える変形能力はわずかですが、水滴のように小さなスケールにとって影響力は絶大です。
そこで研究者たちは表面張力を元に数学モデルを構築し、実際の観測結果と比較しました。
結果、水・エタノール・グリセリン水溶液など複数の液体において数学モデルは現実と一致し、表面張力は跳ね上がった水柱の落下に、支配的な要因であることが示されました。