相手の立場になって考えると親切な指摘ができる

では、これらのすれ違いを無くすにはどうすれば良いのでしょうか?

さらに別の実験では、その方法が明らかにされました。

追加の実験では、参加者に「自分の重大なミスを指摘してもらえずに放置されたときの経験」を思い出してもらいました。

すると、600人中561人がすぐに自分の苦い経験を思い出して説明できたのです。

これはつまり、誰もが「どうして教えてくれなかったんだ!」と恥をかいた経験を持っているということですね。

「チャック開いてるよ」 気づいているのに指摘してあげない心理学
(画像=相手はあなたが親切に気づかせてくれることを望んでいる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

指摘に関する認識のズレは、相手の問題を指摘することで気まずくなることを回避しようとする心理が起こしていると考えられます。

問題を指摘することで相手と気まずくなりたくない → 相手は自分の指摘なんてそれほど必要としてないはずだ → 言わなくても心が傷まない

といった心理的流れが生じているわけです。

小さい問題なら指摘せずとも、笑って見過ごせるのでこの認識のズレは小さくなり、大きな問題ほどこの言い訳的な思考は強く出てくるのでしょう。

だからみんな、自分の問題は指摘してほしいと感じながら、相手は特に指摘してほしいと思ってないと考えてしまうのです。

そのためアビエスバー氏は、「自身の思い出を振り返ることが、指摘のすれ違いを無くし、積極的に指摘したり気づかせてあげたりするのに役立つのだ」と話します。

つまり、誰かのミスに遭遇したとき、相手の立場になって考えれば、親切に行動してあげられるということです。

さて、今回の一連の実験について、アビエスバー氏は次のようにまとめています。

「あなたが指摘することをためらうとしても、それをぜひ行ってください。

相手はあなたが思っている以上に、指摘されるのを望んでいます。

そしてあなたの指摘で助かった相手は、今度は自分が他の人に指摘してあげたいと思うようになるでしょう」

互いに建設的な指摘ができるようになるなら、「どうして教えてくれなかったんだ!」と恥をかくことも少なくなるはずです。


参考文献

Psychologists conducted several experiments on giving and receiving feedback. They were shocked by some of the findings.

元論文

“Just letting you know … ” Underestimating others’ desire for constructive feedback.


提供元・ナゾロジー

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