私たち日本人は刺身や寿司、また秋のサンマなど、魚が好きでよく食べています。

そして世界的に見ても、魚を食べることは健康に良いとされており、魚を意識的に食べる人は増えてきました。

ところが最近、アメリカ・ブラウン大学(Brown University)に所属する疫学者ユーフェイ・リー氏ら研究チームは、統計的に魚を多く食べているアメリカ人は、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)を発症する確率が高いと報告しました。

魚が直接の原因だと証明されたわけではありませんが、魚が好きな人にとっては気になる情報なので、いくらか研究内容を解説します。

詳細は、2022年6月9日付の学術誌『Cancer Causes & Control』に掲載されました。

目次
悪性黒色腫(メラノーマ)の原因は魚なのか?
魚を食べるアメリカ人は悪性黒色腫の発症率が高いという結果

悪性黒色腫(メラノーマ)の原因は魚なのか?

悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの一種であり、「ほくろのがん」などと呼ばれています。

良性のほくろに見た目がいくらか似ており、皮膚の色素細胞がガン化した腫瘍だと考えられています。

魚を食べると悪性黒色腫のリスクが上がる? ちょっと気になるアメリカの報告
(画像=悪性黒色腫の例 / Credit:Stevenfruitsmaak(Wikipedia)_Melanoma、『ナゾロジー』より引用)

「手のひらや足の裏のほくろはがんかもしれない」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

しかし、実はこうした説は日本特有のものです。

悪性黒色腫は、人種によって発症率や発症の箇所に差があることが報告されています。

日本人では発症率は比較的少なく、足の裏や手のひらにできる場合が多いため、上記のような噂が出てきたようです。

※足の裏や手のひらにほくろがある人は珍しくないため、該当していても特別に心配する必要はありません。

ただ日本の場合はともかく、この悪性黒色腫はアメリカでは比較的発症率が高いとされています。

日本の発症率は10万人に1人程度と報告されていますが、アメリカでは5番目に多いがんとして知られているのです。

実際、今回のリー氏ら研究チームによると、「アメリカ人が生涯で悪性黒色腫を発症するリスクは、白人で38人に1人、黒人で1000人に1人、ヒスパニック系では167人に1人」とのこと。

そこでチームは、アメリカの悪性黒色腫と食生活の関連を調査することにしました。

特に今回は、近年アメリカで摂取量が増えている魚に焦点を当てています。

調査では、50~71歳のアメリカ人49万1367人を対象にし、彼らの15年間にわたる魚の摂取量と、悪性黒色腫の発症率を比較することにしました。

魚を食べるアメリカ人は悪性黒色腫の発症率が高いという結果

調査の結果、中央値(1日あたり約3gの魚を食べた人)に比べて、1日あたり約43gの魚を食べた人は、悪性黒色腫の発症率が22%高くなっていました。

つまり、ほとんど魚を食べない人に比べて、週に300g(サンマ2尾もしくはサーモン3~4切れくらい)の魚を食べる人は、悪性黒色腫になりやすかったのです。

では、この結果は、魚を食べることに直接的な原因があると言えるのでしょうか?

そうとは言えません。

なぜなら、今回の研究では、がんの発症リスクを高めるいくつかの要因(ほくろの数、髪の色、日焼け歴など)を調査に含めていないからです。

魚を食べると悪性黒色腫のリスクが上がる? ちょっと気になるアメリカの報告
(画像=魚好きと日焼けに関係があるだけなのかも / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

例えば海が好きな人は、ビーチで過ごす時間と海の幸である魚を食べる割合の両方が増加するでしょう。

つまり悪性黒色腫の直接的な原因は、魚を食べることではなく、過度な日焼けなのかもしれません。

魚をたくさん食べる日本人では悪性黒色腫が珍しいことを考えると、「直接的な原因が他にある」という意見は妥当に思えますね。