失業時の収入保障としてよく知られている「失業保険」。会社員なら貰えるイメージはありますが、フリーランスの場合は失業保険をもらえるのでしょうか。また、もしも不正受給してしまった場合はバレてしまうのでしょうか……?
今回は、「フリーランスと失業保険」というテーマで、失業保険受給資格の有無や再就職手当、不正受給のペナルティなどについて紹介します。
目次
開業届を出したフリーランスは失業保険をもらえない!
【ケース別】こんな人は失業保険をもらえる?
開業届を出したフリーランスは失業保険をもらえない!
まず、ハッキリ結論から言ってしまいます。開業届を提出してフリーランスとして活動している場合、たとえ収入が0円でも、失業保険を受給することは原則できません。
フリーランスであることを隠して失業保険を受け取った場合、言うまでもなく不正受給になります。
しかし、「収入0円の状態は実質失業状態では……? なんで失業保険をもらえないの!」と思う方もいるかもしれません。
その答えは、「失業保険」のシステムを知ればわかるでしょう。
そもそも失業保険とは?
失業保険とは、正式名称を「雇用保険」といい、原則企業は雇用した従業員全員を強制的に加入させる義務を負っています。
以下2つの条件を満たしている場合、社員はもちろん、アルバイトやパートでも対象となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日(1か月)以上の雇用見込みがある
失業保険を管理するのは国(ハローワーク)であり、保険金は企業と従業員がそれぞれ負担します。「えっ、そんなの払ってないけど」と思う方もいるかもしれませんが、給料からサッ引かれているのでご安心ください。
では、雇用保険はなんのために存在するのか。いくつかある使い道のうち、従業員が万が一失業した場合の収入保障にあてる制度がよく知られているため、「失業保険」と呼ばれるのです。
失業保険の受給条件
従業員が失業した場合、収入を保障して再就職まで安定した生活を送れるよう、「基本手当」がもらえます。「失業保険がもらえる」みたいな言い方をされている時は、この基本手当のことを指している場合がほとんどです。
基本手当は、以下の条件を満たすと離職の方法(自己都合/会社都合)や被保険者期間(就職期間)に応じて、原則1年間、離職前6か月の日割り給料の45%~80%が支払われます。
- 離職日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上ある(会社都合の場合は1年間に6か月以上)
- 就職しようという意思がある(ハローワークで求職申込を行った)
- いつでも就職できる能力がある
- 積極的に仕事を探しているが、職業に就けていない
つまり、失業保険は単純に「失業した人をサポートするための保険」ではなく、「ある程度の期間において雇用保険に入っており、かつ就職の意思がある人の生活をサポートするための保険」なのです。
【ケース別】こんな人は失業保険をもらえる?
失業保険の概要を整理したところで、フリーランスや副業ワーカーに関連しそうなケース別に「こんな人は基本手当をもらえるのか」を見ていきましょう。
※支給の判断はハローワークが行うため、以下のケースはあくまで原則および一般論です。下記にあてはまっても本記事の見解とハローワークの見解は異なる可能性があります。
ケース1. フリーランス10年目。コロナ禍で収入が激減し、やむを得ず廃業した人
コロナ禍でフリーランスの収入が大きく減少したことは、フリーランス協会の統計調査などでもよく知られています。もし仮に、コロナ禍の直撃でベテランフリーランスの収入が激減し、廃業した場合は基本手当の対象になるのか。
これは基本手当の対象にはならないケースとされます。
基本手当の支給条件の1つである「離職日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上ある」という条件にあてはまらないためです。フリーランスはそもそも失業保険の被保険者ではないので、たとえ廃業しても失業保険は支給されません。
ケース2. 5年勤めた会社を退職し、開業届を提出してフリーランスになった人
会社員からフリーランスに転身するケースは多いですが、この場合は「会社の退職」を経由します。そのため、支給要件を満たしていそうな気がしますが、実際はどうなのでしょうか。
残念ながら、この場合も支給対象にはならないでしょう。確かに保険料自体は納めていますが、フリーランスになっている状態は「失業中」と認められない(個人事業主なので、事業を運営していると判断される)ので、対象から外れてしまうと考えられます。
ケース3. 3年勤めた会社をクビになり、開業届を出さずにフリーランスになった人
上記のパターンと似ていますが、開業届は出さずにフリーランスになることもできます。ただし、その場合も残念ながら支給対象にはならないと考えられます。
そもそも、ハローワークは開業届の提出という「形式」だけでなく、フリーランスとして業務を行っているかという「実態」も踏まえていると判断するのが自然です。小手先のごまかしは通用しないと考えていいでしょう。
ケース4. 3年勤めた会社を、独立開業のために辞めた人
まだフリーランスにはなっていないものの、開業準備を進めている人に受給権はあるのでしょうか。
これはハローワークに相談して許可を得た場合を除き、基本的に支給対象にはなりません。開業準備を進めている状態は、「就職する気がない」ともいえます。そのため支給対象にならないのです。
ただし、求職活動を経て、新たな選択肢として開業準備を始めた場合、基本手当は支給されるという考え方もあります。この場合、開業準備が完了するまでの不安定な期間、求職も視野に入れていることになるので、基本手当が受給できるというロジックになっているようです。
ケース5. 5年勤めた会社をクビになったが、会社員時代の副業だけは続けている人
会社をクビになった後も、会社員時代からの副業を続けていた場合はどうなるのでしょうか。じつはこの際は判断が非常に難しく、「ハローワークの判断次第」になるとされています。
本業を失った副業ワーカーは、確かに「就業していない」状態ともいえそうです。仮に会社員時代から半分趣味だったハンドメイド作品の販売を続けているからといって、離職後の生計を立てられているとは言いづらいでしょう。
そのため、小額・小規模の副業であれば基本手当はもらえると考えてもよさそうです。なお、ハローワークは「就業」の有無を以下の基準を参考に判断すると公表しています。
- 1日に4時間以上働く
- 1週間に20時間以上働く
これらのルールはアルバイトに関して判断材料とされることが多いですが、副業にも同じ条件が適用されると考えていいでしょう。この条件に引っかかると基本手当の受給が難しくなり、基本手当受給中であれば該当する日の手当てが減額されるなどの事態が想定できます。