台頭するECにどう対抗する?

コロナ禍でも絶好調「プレミアム・アウトレット」出店のねらいとECへの対抗策とは?
(画像=高松空港の「プレミアム・アウトレット サテライト」、『DCSオンライン』より引用)

一方で、“四番バッター”だけではない、新たな業態にもチャレンジしている。それが、親会社・三菱地所とのシナジーを活かした、空港敷地内での新業態施設だ。2021年12月から 2022年2月にかけ、富士山静岡空港の敷地内に「プレミアム・アウトレット サテライト」を期間限定でオープン。次いで、2022年3月から5月まで、高松空港内にも「プレミアム・アウトレット サテライト」をオープンした。いずれもECサイトと連動したショールーム型の実験的施設だ。

EC事業への参入について、山岸氏は「ECが今後ますます伸びていくのは間違いない」と言いながらも、「サテライトはプレミアム・アウトレットの新たな出店形態や体験価値などを模索する実証実験が目的。その上で、プレミアム・アウトレットに行ったことがないという方の来場経験にもつながればと考えている」と、ECそのものが主眼ではないと強調する。「あくまでも、プレミアム・アウトレットという実施設のワクワク感や感動価値を重視する。ECが台頭したとしても、わざわざ出かけることで得られる価値がなくなることはない。単なる買い物ではない『体験価値』を極めることで、集客を伸ばせる余地はまだまだあると考えている」(同)。プレミアム・アウトレットが20年間をかけて築き上げてきた、独自の「体験価値」への強い自負がにじみ出る。

20年間築き上げてきた独自の「体験価値」

コロナ禍でも絶好調「プレミアム・アウトレット」出店のねらいとECへの対抗策とは?
(画像=三菱地所・サイモンの山岸正紀社長、『DCSオンライン』より引用)

第1号店の「御殿場プレミアム・アウトレット」がオープンしたのは2000年。当時は「アウトレット=安かろう悪かろう」のネガティブなイメージがあったが、施設運営の努力を重ねる中で、「一流ブランドが手ごろなプライスで買える場所」「非日常空間の中でワクワクしながら宝探しができる場所」という独自のブランドを確立してきた。「『わざわざ行く楽しさ』はECでは提供できない体験価値。ゆえにECとは競合関係にはならない、とみている」(山岸氏) 

「実際に足を運んで、発掘できる楽しさ」の新鮮さを維持し続けるために、各施設では地域の特色を出した独自の運営努力がなされている。一例として、「御殿場プレミアム・アウトレット」では、2022年1月から遊覧ヘリクルージングサービスを開始した。単なる買い物にとどまらないエンターテイメント体験を、9つの施設それぞれが常に生みだし続けている。

ECの台頭、製品のコモディティ化などを背景に、マーケティング界隈では「ただモノを販売するだけでは淘汰される」「これからはカスタマー・エクスペリエンス(CX)の時代だ」などと喧伝される。その「体験価値」の重要性に20年も前から気づき、「体験価値」を軸に独自のブランドを築き上げてきた。そこに、時代がようやく追いついたのかもしれない。

近年ではアパレル業界を中心に在庫過多に悩む企業は多く、サステナビリティの観点から在庫適正化が課題となっている。「プレミアム・アウトレットは都心から離れていることから、ブランドを毀損せずに在庫を販売することができる。また集客力も高く、新規顧客開拓にもなっているため期待されている」(同)

この20年の間に、「車で気軽に行けるエンターテイメント施設」として、家族やカップルで訪れる休日レジャーの定番となったプレミアム・アウトレット。これからも新たな「体験価値」で私たちを驚かせてくれることだろう。

提供元・DCSオンライン

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