新型コロナの影響で年齢に関わらず運動量の低下が問題視されていますが、加齢による筋量低下は待ったなし。 QOL(クオリティオブライフ)の維持・向上のためにも、正しく効率のよいトレーニングを!

文:IM編集部

高齢になるほど干からびる…その原因とは?

新型コロナ感染の影響で生活が一変するなか、「健康に、元気に生きたい」という人々の願いはより強くなっているようです。人に頼ることなく健やかな生活を継続していくためには、やはりしっかりと自分の脚で立ち、歩き、自分の身体で自在に生活動作を行えることが大前提。となると、今の筋肉をキープすること、減ってきている場合は筋量アップをつねに意識することが必須でしょう。

ヒトの筋量を測るうえでめやすの一つとなるのが「水分量」です。 私たちの身体の水分量は、ご存じのように加齢とともに減少していきます。赤ちゃんの時は体重の70~80%が水分と言われますが、成人になると体重の約60%となり、 高齢になるほど減っていく。言い方は悪いですが歳を取れば取るほど干からびていくわけです。

ちなみに、男性と女性を比べると、男性の方が水分量が多いとされていますが、これは骨格筋量の違いによるものでしょう。骨格筋はその75%が水分と言われており、女性に比べて骨格筋量にまさる男性のほうが全体の水分量も多くなるというわけです。このことからも、高齢になって干からびてくる要因のひとつは、やはり筋量の減少と言えそうです。

年代ごとに身体のさまざまな部位の筋量を計測したデータによると、30歳を100%とした場合、 やはり加齢とともにそのパーセンテージは下がっていくことが分かっています。また、計測対象の部位のなかでも筋量減少の度合いには差があり、大腿四頭筋、腹直筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、広背筋、ハムストリングスの順に減少していくという結果が出ています。

大腿四頭筋は膝伸展筋であり、 この部位の減少は「立ち上がる」などの生活動作に支障をきたします。高齢者が直面しているロコモティブシンドロームやサルコペニア、フレイルといった健康の問題にも直結してしまうのです。

コロナ禍の影響で、外出自粛から寝たきりになる高齢者も増えています。また若い年代でも運動不足を自覚する人は多く、こんな時代だからこそ改めて筋力アップとそのための筋力トレーニングが見直されているのです。

筋トレ後の栄養摂取も効率的な筋肥大のカギ

筋トレ後の栄養摂取も 効率的な筋肥大のカギ筋肥大をより効率的に狙うなら、筋トレ終了後のなるべく早いタイミングでタンパク質と糖質を同時 に摂取することも大事です。この時間栄養学的な効果は、分子レベルの研究でも解明されています。

筋トレをすると、「mTOR(エムトア=機械的ラパマイシン標的タンパク)」というタンパク質キナーゼが活性化され、「遺伝子DNAの転写→翻訳→タンパク合成」の流れが促進することが分かっています。このmTORシグナル伝達系は、同時に「ユビキチン・プロテアソーム系」というタンパク質分解系を抑制する働きを持ちます。

つまり、mTORが活性化すると タンパク質合成が上昇する一方、タンパク質分解は低下する。この2つの現象が同時に起こるため、効率よく筋線維が肥大することになります。

ところが、食事摂取あるいは栄養摂取でも、タンパク質を摂取した場合は必須アミノ酸であるEAA、なかでもロイシンという必須アミノ酸がmTORを刺激しますし、同じく炭水化物や糖質でもインスリン反応を通じてmTORを刺激することが分かっています。ある研究によると、平均74歳の高齢者を対象に、筋トレ直後に栄養摂取をしたところ、大腿四頭筋の横断面積と筋繊維(筋肉の細胞)面積が有意に大きくなるという結果が出たそうです。このことからも筋トレを行うこと、そして、できれば筋トレの直後にタンパク質と糖質を同時に摂取することが、運動による筋肥大にポジティブな影響をもたらすと言えそうです。

では、筋肥大のための効率的なトレーニングメソッドとは? お勧めしたいのが加圧トレーニングです。加圧トレーニングとは、腕や脚の基部(付け根)の部分を専用のベルトで加圧除圧し、適切に血流制限をした状態で行う筋力トレーニングです。 このトレーニングを行うと、エネルギー消費による化学反応の副産物として大量の乳酸が発生し、血液中へと流れていきます。血管内には高濃度の乳酸が滞留することになり、アドレナリンや成長ホルモンの大量分泌を促します。このように、低負荷・短時間の筋力トレーニングでも筋力増加と筋肥大をもたらすのが加圧トレーニングの最大の特徴です。

適切な運動と栄養摂取で筋肥大のスイッチを入れる
(画像=『FITNESS LOVE』より引用)