チャート:米国のエネルギー関連、前年同月比の推移
もうひとつは、中間選挙前の民主党支持層へのアピールが挙げられます。気候変動対策向け補助金を盛り込んだ「より良い再建法案」が21年12月に民主党中道派マンチン上院議員の反対で棚上げされた後、成立の目途が立たず、少なくとも大統領令署名で実績を積み上げたかったに違いありません。
大統領令署名を受け、太陽光発電所の株価は6日に上昇。サンパワー・コープは2.7%高の18.88ドル、エンフェーズ・エナジーは5.4%高の206.97ドル、サンランは5.9%高の28.37ドルでそれぞれ取引を終えました。逆に、太陽光パネル製造メーカーのファースト・ソーラーは3.9%安で引け。太陽光発電が安価な太陽光パネルの生産増加で凍結していたプロジェクト再開と発電量の拡大が期待された一方で、太陽光パネル製造メーカーは輸入業者との厳しい競争にさらされるため、明暗が分かれました。
東南アジア4カ国への関税免除は、バイデン政権が重視する気候変動対策を実現すべく米国内製造業支援を犠牲にしたように見えます。バイデン政権はここに配慮したのか、DPAを発動。太陽光パネルを始め、クリーンエネルギー関連機器の国内での生産促進を目指します。
太陽光パネル関連への関税は免除されたものの、2年後の2024年の大統領選のタイミングで期限切れを迎えます。米司法省の判断次第では関税発動が取り沙汰されますが、バイデン政権の対応は支持率動向や世論が命運を分けることとなりそうです。
余談ながら、今回の動きは対中追加関税をめぐるバイデン政権の行動を読み解く上で重要かもしれません。バイデン政権は敢えてOver promise under deliverという手段を講じる傾向があるだけに、撤廃や緩和ではなく、上院が対中競争法案で盛り込んだ対中関税適用除外の拡大という着地点に持っていくシナリオに留意したいところです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年6月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
文・安田 佐和子/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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