自然が分解できない物質を作るのは、私たち人間だけです。

その最たる例が「プラスチック」でしょう。

今やプラスチック製品は世の中に溢れかえっていますが、そもそもプラスチックは石油を原料にしています。

液体であるはずの石油は、どのようにして頑丈なプラスチックになるのでしょう?

また、プラスチックが自然下で生分解できないのはなぜでしょうか?

目次
300種以上あるプラスチックに共通する点は?
石油がプラスチックに変わるしくみ

300種以上あるプラスチックに共通する点は?

一言でプラスチックと言っても、種類は300種以上あり、性質や用途も多岐にわたります。

その中でプラスチックに共通する点は、「ポリマー(重合体)」を材料とすることです。

ポリマーとは、複数の「モノマー(単量体)」を鎖や網状に結びつけた(重合した)分子のことで、プラスチックに柔軟性や強度、可鍛性などを与えます。

液体の石油が頑丈なプラスチックに変わる仕組み「プラスチックが100年残り続ける理由」って知ってる?
(画像=モノマーとポリマー / Credit: 住友精化より、『ナゾロジー』より引用)

さらに、プラスチックは大きく2つのカテゴリーに分けられます。

1つは、微生物や植物を原料とする「バイオプラスチック」、もう1つは、原油や天然ガスを原料とする「合成プラスチック」です。

バイオプラスチックと言っても、すべてが生物分解性ではありませんし、多くは合成プラスチックと同じく、埋め立てられた土壌で長期間残留する傾向をもちます。

では、なぜプラスチックは自然下で分解できないのか、それを知るために、合成プラスチックの作り方を見ていきましょう。

石油がプラスチックに変わるしくみ

まず、採取された原油は、炭素原子と水素原子の組み合わせからなる「炭化水素」でできており、それらはランダムな長さの鎖状になっています。

この炭化水素こそ、地球で生まれた最初のプラスチック原料です。

プラスチックの生産は、製油所で本格的にスタートします。

ここでは原油を炉の上で加熱し、炭化水素を沸点の違いに基づいて分離します。

蒸留管では、沸点の高い炭化水素は炉に近い高温な下部から、沸点の低い炭化水素は炉から遠く低温な上部から得ることができます。

その結果、原油は、石油・ガソリン・灯油など、ほぼ同じ性質をもつ炭化水素をグループ分けできるのです。

液体の石油が頑丈なプラスチックに変わる仕組み「プラスチックが100年残り続ける理由」って知ってる?
(画像=原油を蒸留管で用途別に分ける / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

その内の一つが「ナフサ(naphtha)」と呼ばれ、プラスチックの主要な原料となります。

ナフサに含まれるエタンとプロパンは、プラスチックの製造に最も重宝される炭化水素です。

しかし、プラスチックの原材料として使えるものにするには、エタンとプロパンを適切なモノマーに変えなければなりません。

その主な方法が、酸素ゼロの環境下で高熱と高圧を加えるものです。

こうして、エタンから「エチレン」、プロパンから「プロピレン」というモノマーが得られます。

次のステップは、これらのモノマーを新しい配置で結びつける(重合する)ことで、先に述べたポリマーを作ります。

エチレンとプロピレンの場合は、最も広く使われるポリマーの「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」になります。

ポリエチレンは、プラスチックの密度を自由に作り分けることができ、しなやかさや頑丈でタフな性質を生み出します。

一方のポリプロピレンは、プラスチックに特有の弾性や柔軟性をもたらします。

この2つのポリマーが人気なのは、こうした理由からです。