家電特化で勝ち残る!

その戦略の1番目が、家電商品の「現金値引き」だ。多くの家電量販店がポイント値引きによる囲い込みに躍起となるが、顧客にとっては使いづらい。対して、ケーズHDの現金値引きはシンプルで分かりやすい。

2番目に家電商品への特化が挙げられる。家電商品の市場規模が頭打ちを迎える状況で、大手家電量販店各社は非家電商品へのシフトを急ぐ。上場家電量販店上位6社の売上高に占める非家電製品のウエートは年々上昇、直近では2割近くに達している。ドメインも、プログラミング教室など多少とも本業と関連のあるサービスから、リフォーム・日用品・さらには酒類まで、ほとんど無関係な商品にまで拡がっている。

一方でケーズHDは、あくまで本業にこだわる。従業員にしても、雑多なものを売らされるより、家電に特化した方モチベーションが上がる。専門性に磨きをかけ、顧客に対してもよりていねいに接客できる。家電に専念するからこそ、特徴ある売場づくりにも力が入る。今期はIoTやAIといったつながる家電体験コーナーの開設を計画している。

3番目は「安心パスポート」を核とする会員獲得だ。紙カードではじまった同施策も、現在はアプリ対応が進んでいる。安心パスポートでは、WEBチラシや限定クーポンといった情報を発信するほか、簡単な手続きで契約できる長期安心保障などアフターサービスに力を入れる。

1947年、茨城県水戸市で加藤電気商会が開店、わずか3坪のラジオ販売店だ。設立から75年、ケーズは熾烈な競争を生き残り業界上位の座にまで上りつめた。家電販売で独自の経営方針を貫くことができるのか、今後に注目したい。

提供元・DCSオンライン

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