ケーズホールディングス(茨城県/平本忠社長:以下、ケーズHD)が5月9日に発表した2022年3月期連結決算は、売上高が7472億円(対前期比5.7 %減/前期から453億円減)、営業利益が417億円(同19.3%減/同99億円減)、純利益が285億円(同26.3%減/同101億円減)の減収減益だった。
ケーズHDは当期より「収益認識に関する会計基準」を変更しているが、変更影響を加味したとしても、減収減益のトレンドは変わらない。

競合他社が非家電に注力する中であえて家電に特化する! ケーズHDの勝ち残り戦略
(画像=gettyimages/winhorse、『DCSオンライン』より引用)

巣ごもりから一転、減収減益で着地

2020年は、特別定額給付金支給や外出自粛に伴う家計支出減が下支えする中、テレワークに伴うパソコン需要や巣ごもり生活下における大型テレビへの買い替え需要などもあり、家電量販店は大いに潤った。

ケーズホールディングスも、2021年3月期の売上高は同11.9%増の伸びを示し、過去最高を記録したものの、22年3月期は一連の追い風が一巡したことに加え、天候不順によるエアコンの売れ行き不調に暖冬なども重なり、売上高が落ち込んだ。

既存店売上高も苦戦し、通期で91.3%、直近の第4四半期(1-3月) ベースでも95.9%となった。品種別(テレビ・パソコン・冷蔵庫など)でも、洗濯機を除く7品種で前期実績を下回った。

ただし、一過性要因の多い前年度とは見劣りするものの、家電製品の需要は底堅く推移している。

出店も意欲的に進め、22年3月期は全国に15店を新規オープンした。この結果、2022年3月末現在の店舗数は533店(529店・FC4店)と1年間で3%ほど増加した。なお閉鎖は1店舗のみで、出店数に近い38店舗を閉鎖する業界トップのヤマダに比べ積極姿勢がうかがえる。

減収に伴い、粗利益高も対前年度比8.7%減にまで落ち込んだ。人件費抑制等により販管費は同5.6%%減に抑え込んだものの、減収影響をカバーできず営業利益は減益に終わった。

寡占化進む家電量販店、ケーズの勝ち残り戦略は?

2023年3月期は、売上高が対前期比5.7 %増/前期から427億円増の7900億円、営業利益が同3.0 %増/同12億円増の430億円、当期純利益が同5.1%増/同14億円増の300億円と増収増益をめざす。

前期は季節要因に振り回されたが、今期は順調にエアコンなどの売れ行きが期待できそうで、上海ロックダウンの影響などを考慮しても、全店売上高および既存店売上高のいずれもプラスが見込めるようだ。出店攻勢も強気姿勢が続き、2023年3月期も新たに18店舗がオープンする計画だ。

国内における家電販売の市場は現在7兆円台といわれているが、少子高齢化もあり今後大きな伸びは期待できない。スマートホン普及の影響によるオーディオ・ビジュアル機器の需要減少、かつては利幅の大きかったパソコン・大画面テレビの価格低下もアゲインストだ。

大量仕入れと安売りを武器に、これまで街のメーカー系列電気店や総合スーパーなどの非家電店からシェアを奪って急成長してきた家電量販店だが、これからは量販店同士の競争はますます熾烈になっていく。コジマをはじめ、競争に敗れ吸収合併された量販店も少なくなく、家電量販店上位7社でシェアが7割を占めるほどまで寡占化が進んでいる。

ヤマダホールディングス、ビッグカメラに次ぐ3位に食い込んでいるケーズとて、いつ飲み込まれるかわからない。しかしケーズHDは決して規模を追わない、「頑張らない経営」を真骨頂とする。競合他社と明確な差別化戦略を打ち立て、生き残りに勝負をかけるのだ。