北極海が淡水となる影響
このシナリオでは、氷期に世界の海面が現在より最大130mも低くなり、北極の氷塊が海洋の循環を著しく制限していた可能性を示唆しています。
氷期を終え、この氷の障壁による北極海の淡水化が機能しなくなると、重い塩水が北極海へ流れ込んでいきます。
逆に、北極海が溜め込んだ大量の軽く冷たい淡水は、一気に外洋へ放出されることになるのです。
この海洋の変化によって、グリーンランドの気温は数年で8~10℃も上昇した可能性があり、また世界の海面を想定していたよりも高く押し上げた可能性があります。
サンゴ礁の古い化石を調べると、特定の時期でその位置が南極の氷床コアから推定される海面より高い位置にあることが示されています。
これが淡水が氷期に固体として陸上に貯蔵されていたのではなく、液体の形で北極海に貯蔵されていたと考えると、この海面の不一致の問題が説明できるといいます。
まだ、北極海の淡水化は発見されたばかりで、その影響は明確にわかっていません。
しかし、これまで見つかっている説明のつかない過去の気候変動が、ここから説明可能になる可能性があると、研究チームは語っています。
参考文献
Alfred Wegener Institute
元論文
Glacial episodes of a freshwater Arctic Ocean covered by a thick ice shelf
提供元・ナゾロジー
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