空気中から水を吸収するゲル土壌を開発

今回新しく発表された「空気中から水を吸収できる土壌」は超吸湿性ゲルを利用したものです。

土壌には超吸湿性ゲルが含まれているため、自然と空気中から水を吸収し、温度上昇によって放出します。

そしてこの吸収と放出のサイクルは、1日の温度差によって自然と行われるとのこと。

空気中から水を吸収できる「超スポンジ土壌」、昼夜の気温差を利用して水やりも全自動
(画像=夜間に水分を吸収し、昼間に放出する / Credit: Guihua Yu、『ナゾロジー』より引用)

夜間は冷涼で湿度が高いため水を蓄えやすく、日中は太陽熱によりゲルが活性化されることで水が土壌に放出されるのです。

さらに放出された水分の一部は空気中に還元されるため、湿度も上昇。これにより、植物成長のためのスムーズな水循環サイクルが確立されるでしょう。

また研究チームの報告によると、この新しい土壌は1グラムあたり約3~4グラムの水を抽出できるとのこと。作物にもよりますが、約0.1~1キログラムの土壌から、1平方メートルの農地を潤すのに十分な水を供給できます。

実際、実験によると、乾燥地域でよくみられる砂質土壌が1週間後に最初の20%分の水しか保持していなかったのに対し、ゲル土壌は4週間後でも40%の水を保持していました。

また別の実験では、砂質土壌とゲル土壌に大根を植えて経過を観察。

空気中から水を吸収できる「超スポンジ土壌」、昼夜の気温差を利用して水やりも全自動
(画像=ゲル土壌は水分を長期間保持し、植物の成長を助ける / Credit: Guihua Yu、『ナゾロジー』より引用)

その結果、砂質土壌の大根は給水期間後、2日以上生き残ることはありませんでしたが、ゲル土壌の大根は14日間も生き延びました。

このようにゲル土壌を活用するなら、乾燥地域でも植物を育てることができます。これは世界中の乾燥地帯を救うものとなるかもしれません。

今後研究チームは、超吸湿性ゲルを、飲料水システムやソーラーパネル冷却などの他のアプリケーションに利用できるか考慮していく予定です。

参考文献
The University of Texas at Austin

提供元・ナゾロジー

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