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はじめて視覚を得た盲目だった子供たちも錯覚に陥る
高度な脳機能だと思われていた多くの現象は単純な神経回路の働きである

はじめて視覚を得た盲目だった子供たちも錯覚に陥る

錯覚が起きているのは脳ではなく、目の「網膜」だと判明!
(画像=はじめて世界をみる「クリーンな脳」をもつ子供たちも、明るさの錯覚に陥った。つまり脳の学習機能もまた錯覚には必要ない/Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

研究チームの仮説を裏付けるような、他の結果も得られています。

錯覚の生成場所がどこなのかを特定するために、研究者は盲目から回復したばかりの子供に、これまでと同じような画像をみせました。

もし錯覚が脳の学習機能によって成り立っているものなら、世界をはじめてみることになった子供たちは、錯覚から逃れることができるはずだからです。

しかし結果は違いました。

生れてはじめて視力を得た「クリーンな脳を持つ」子供たちですら、明るさの錯覚の餌食になりました。

これは、明るさの判断が脳の介在なしに、網膜の単純な神経回路で独立して行われている証拠となります。

高度な脳機能だと思われていた多くの現象は単純な神経回路の働きである

錯覚が起きているのは脳ではなく、目の「網膜」だと判明!
(画像=高度だと思われていた脳機能の多くが単純な回路の産物である可能性が高い/Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究によって「錯覚」といった脳の高度な機能に帰着すると思われていた現象が、実は非常に単純な神経回路によって生成されていることがわかりました。

研究者チームはこのような結果は「明るさの判別」に留まらないと考えています。

すなわち、私たちが複雑で高度だと考えている脳機能の多くは、実は単純な神経回路の上に乗っている可能性があるからです。

複雑な脳機能を単純に考える…という一見、矛盾にも思えるアプローチが、一般的になる日は近づいているのかもしれません。

研究内容はアメリカ、MIT(マサチューセッツ工科大学)のPawan Sinha氏らによってまとめられ、学術雑誌「Vision Research」の8月号に掲載される予定です。

Mechanisms underlying simultaneous brightness contrast: Early and innate

提供元・ナゾロジー

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