炭素14年代測定の問題点
科学的年代測定は纏向の実年代を特定できるのか。国立歴史民俗博物館は炭素14年代測定により「箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦 240~260 年と判断」している(「古墳出現期の炭素14年代測定」、2011年)。2020年に炭素14年代の較正曲線が更新されたが、歴博に問い合わせたところ、箸墓の年代は既に日本産樹木に基づいて検討されており、判断に変更はないという。
歴博の判断に疑問があることは、新井宏氏が発表当初から指摘している(「歴博「古墳出現の炭素14年代」について」、2009年)。歴博の発表はミスリードである。
例えば、ホケノ山から出土した木棺煤と小枝の炭素14年代測定が行われている(表3)。木棺煤も小枝も推定幅が広く、現時点では実年代の推定に適していない。歴博はなぜかこのホケノ山の測定結果に触れていない。測定結果は推定年代幅ごとに確率を添えて発表されるべきものであり、240~260年のようなピンポイントで実年代を特定することはできない。
纏向の勢力が3世紀から画文帯神獣鏡を入手
寺澤氏のような精緻な考古学的手法でも、また科学的年代測定法でも、現段階では纏向の実年代は特定できない。ホケノ山は3世紀第4四半期以降、箸墓は同時期または4世紀第1四半期以降となるのではないか。
ただ、いずれにしても画文帯神獣鏡の同向式(A鏡)がホケノ山に副葬されており、3世紀に近畿の勢力が中国と交流し、漢鏡を入手していたことを示す。纏向は4世紀ということはなく、3世紀から形成されており、緩やかに発展したと思われる。邪馬台国があったとする資格は備えていると言える。
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文・浦野 文孝(岡崎出身、千葉市在住。古代史に関心のある一般市民。)/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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