ヤマダホールディングス(群馬県/山田昇会長兼社長CEO:以下、ヤマダHD)が5月6日に発表した2022年3月期連結決算は、売上高が1兆6193億円(対前期比7.6%減/前期から1331億円減少)、営業利益が657億円(同28.6%減/同263億円減)、当期純利益が505億円(同2.4%減/同12億円減)だった。
ただし、ヤマダHDは2022年3月期に「収益認識に関する会計基準」を適用しており、この変更影響を除いた場合、実施的な売上高の落ち込みは同1.7%減にとどまっている。
デンキ事業の落ち込みを住建事業がカバー
前年度に特別定額給付金により家計の懐が温まったこと、テレワークに伴うパソコン・通信機器購入、巣もごりに伴う50K大型テレビ買い替えなどにより、小売家電業界は盛り上がった。2022年3月期は一過性需要が剥落したことに加え、天候不順も加わり多くの家電量販店が売上減に陥った。
業界トップのヤマダHDも、業態転換や住宅建設分野への進出による品揃え拡大に取り組んできたが、家電の低調ムードを覆すまでにはいたらず、減収に終わった。
同業他社をみても、ケーズホールディングスも売上高は同5.3%(会計基準変更影響除く)、エディオンも同3.8%減(同)、上新電機も同7.5%減と競合他社はどこも苦しい(ビッグカメラ・ヨドバシカメラは決算期が違うため単純比較できず)。
注目したいのは、ヤマダホールディングスの落ち込みは同1.7%減の落ち込みにとどまっている点だ。「デンキ事業」の落ち込みを、住宅建設など他分野でカバーしているのがヤマダHDの特徴だ。セグメント別にみると、全体の8割前後を占めるデンキ事業が同7.8%減なのに対し、「住宅建設事業」は同48.5%増と5割近く増えている。
住宅建設事業の伸びは買収効果が大きいが、ビジネス自体も好調で、苦しいデンキ事業を下支えする。ウッドショックによる資材調達難はあったが、注文住宅の新規受注件数は2割近く伸びているほか、リフォームも好調だ。中古住宅の買い取り再販ビジネスも、滑り出しは順調であるようだ。
営業利益については、従来から進めてきたコスト構造改革により粗利益率改善・販管費抑制につとめたものの、減収影響をカバーするまでには至らなかった。
積極的なM&Aに、店舗リストラも断行
ヤマダHDはここ数年、「暮らしまるごと」戦略を旗印に、品揃えの拡大に大きく舵を切っている。
売上高の8割前後を占める主力ビジネスのデンキ事業においても、ファニチャー・生活雑貨・リノベーション・インテリア・玩具など、家電以外の商品カテゴリー展開を急ぐ。2021年6月18日には、「たのしい。くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」をコンセプトとする新業態「LIFE SELECT(ライフセレクト)」1号店を熊本県熊本市に立ち上げ(既存店の業態転換)、さらに今年3月までに合計17店(新規開店3店・業態転換15店)をオープンさせた。
住宅建設事業を中心に、M&A(合併・買収)にも注力する。2019年12月に内紛と経営困難に陥っていた大塚家具を、20年には完全自由設計の注文住宅に定評のあるレオハウスを買収した。さらに20年10月には、ヒノキヤグループを子会社化した。ヒノキヤは戸建て建築に加えて独自の「Z空調システム」も事業展開しているユニークな企業だ。なおヤマダは、4月に株式交換によりヒノキヤを完全子会社化している。
一方で、構造改革も継続して進めており、22年3月期も新規出店(50店)に匹敵する数(38店)の撤退を敢行した。閉鎖した中には、フラッグシップ店舗の「ツクモ秋葉原」「LABI新宿東口」「LABI新橋(旧キムラヤ新橋本店)」も含まれる。
退店のリストラ効果は大きく、とくに都心店舗だと家賃負担が重くのしかかる。たとえばLABI新橋の場合、地下2階地上8階の「新橋駅前MTRビル」1棟を借り切っていたこともあり、森トラスト・アセットマネジメントに支払っていた賃料は月額7000万円を超え、戻ってくる敷金・保証金は22億5000万円に達するという。