世界秩序
最後に世界秩序の観点から、今後の世界秩序のグランドデザインをどう描くかと言う問題がある。
中国は、世界覇権への経済力を基盤とした能力と意図(少なくとも習近平氏が率いる間は)とを持っていると見るのが妥当だろう。そして、筆者は民主化への道が閉ざされ言論の自由が激しく抑圧され、また唯物論を国是として道徳を担保する基盤を電脳監視社会化が代替する共産中国が世界覇権を握る事は人類にとって最大の不幸、災厄だと考える。
「西側 vs 中露 + その他」の構図では、中国の世界覇権は成就されてしまう可能性が高く、それを防ぐには「西側 + ロシア + その他 vs 中国」の構図に持ち込む事は戦略的必然と思われる。今歴史は前者に向け驀進中だが、どこかでブレーキを踏み中露疑似同盟に楔を入れ後者に向ける必要がある。
バイデンや、ジョージ・ソロス氏を含めたネオコンは、プーチンを屠った後に中国を民主化させると言うような構想を描いているようである。バイデンはその場の辻褄合わせで発言しているだけだろうが、そんな甘い戦略が成り立つ訳もなく、ネオコンが本気で考えているなら理解に苦しむ。イラク戦争の失敗を失敗と見ていないのだろうか?
あるいはジョージ・ソロス氏等の左派は、ネオコンそのものとは距離があり、民主化云々よりも教祖カール・ホパーの主著「開かれた社会とその敵」のエッセンスよろしく「非民主化唯物論社会」の方を「宗教の抹香臭さが残る社会」より上位に置いているのかも知れない。
この辺りは世界観が問われる問題でもある。
筆者は、例えば秩序Aと秩序Bのどちらかを選ばねばならぬ場合には、下記不等式が成り立つ時に正義の観点からは秩序Aに軍配が上がると考える。
「秩序Aの齎す社会の幸福総量 > 秩序Bの齎すそれ ± 移行に伴う流血と破壊の総量差」
世界秩序に於いてもまた然りであり、筆者は「西側 + ロシア + その他 vs 中国」の構図で中国の世界覇権の野望の牙を抜歯する事が在るべき次の世界秩序の姿だと考える立場である。だがウクライナ戦争でのロシアの戦争犯罪や流血と破壊の総量等によっては、再考も有り得る。
以上、筆者は稚拙ながらウクライナ戦争を各側面に区分して捉える事の枠組み提示を試みた。恐らくもっとよい整理の仕方や別の見方も当然あるとも思うが、当戦争の出口戦略を描くに当たっては全てを一体として捉えるだけでなく、こうした区分的アプローチも不可欠と思われる。
【参考拙稿】「ウクライナ戦争の1シナリオ:手負いの熊が核を放つ日」
文・佐藤 鴻全/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?