トレーニング量を操作する
ワークアウト・プログラムを作るには、まずは種目を選択する。そして、それぞれの種目のセット数やレップ数を決めていくわけだが、バリエーションを考えるときに、一番手っ取り早いのはこのセット数とレップ数を増減させることだ。運動量を操作するだけで、筋肉への刺激は変化し、それがメタボリックダメージやメカニカルファティーグを促すことになる。運動量の計算は、単純にレップ数×セット数から数値を求めることができる。
種目毎にこの計算をし、最後に全ての数値を合算すれば、その日のワークアウト量が数値として出てくる。この数値を増減させれば、ワークアウト量を操作することができる。確かにワークアウト量を増加させるには使用重量を減らす必要がある。高重量は筋力を伸ばすには非常に有効だが、筋肥大を最優先にするなら、高重量×低レップより、使用重量を少し落としてワークアウト量を増やしたほうが有効である場合が多い。
ましてや全身の筋肉をまんべんなく発達させるなら、特定の部位のためだけに高重量を扱ってエネルギーの大半を消耗してしまうようなやり方は賢明とは言えないはずだ。ニューヨークのプロフェッショナル・アスレチック・パフォーマンスセンターで運動競技コーチを務めるアヴァ・フィッツジェラード氏によると、運動強度を1RM(1回だけできる重量)の50〜75%まで下げ、より多くのワークアウト量をこなすやり方は、筋力アップのワークアウトよりも確実に筋量増加をもたらすのだそうだ。
実際、筋量を増やすことを最優先にしたワークアウトでは、1セットあたり20レップを行う場合もあるという。このようにワークアウト量を増やすことは、筋力アップのためのプログラムに比べて、確実に筋量を増やす結果をもたらすと考えられている。この点はぜひ覚えておいてほしい。
使用重量を落としてでもトレーニング量を増やすようにしてみよう。そうすることで筋量アップの効果が期待できる
ネガティブ動作を強調する
ウエイトトレーニングの種目では、ウエイトを持ち上げて下ろす動作を繰り返す。この業界ではウエイトを持ち上げる動作をポジティブ、下ろす動作をネガティブと呼んでいる。ポジティブとネガティブを比較すると、ポジティブのほうが運動としては難しい。これは試してみれば分かることだが、例えばスクワットでは、立ち上がる動作よりも、しゃがんでいく動作のほうが楽に感じられるはずだ。
しかし、筋肥大を優先して考える場合、ネガティブ動作を重点的に行ったほうが効果が上がりやすい。一般的にウエイトを挙げることができなくなっても、下ろす動作はまだ続けられるわけで、ネガティブ動作を意識的にゆっくり行うだけでも種目の難易度を上げることができるはずだ。
あるいは、通常どおりのスピードでレップをこなし、ウエイトを挙げられない状態になったら、パートナーに手伝ってもらってウエイトをトップまで持ち上げ、自力で下ろす動作だけを行うやり方もある。これなら、持ち上げる力が尽きても下ろす動作だけを繰り返し、自力でウエイトを下ろす動作がコントロールできなくなるまで対象筋を追い込むことができるはずだ。
どうしてネガティブはポジティブより楽に行えるのか。それは、私たちの筋肉が下ろす動作を得意としているからだ。下ろす動作が得意なので、下ろす動作のときだけウエイトを重くしたいところだが、動作の途中で重量を変えることはできない。そこで、下ろす動作を意識的にゆっくり行ったり、パートナーに手伝ってもらって下ろす動作だけを行ったりして難易度を高める工夫が必要になるのだ。
なお、下ろす動作だけを繰り返すやり方では8〜10レップを目安にする。また、必ず最後の1レップまで自力で行うようにすること。つまり、真の限界のほんの少し手前でセットを終えるようにしたい。何度も繰り返すが、筋肥大を促すにはワークアウト量を増やす必要がある。ネガティブ動作だけであっても無理な高重量を扱おうとせず、8〜10レップが行える重量を選択しよう。
セット間の休憩を制限する
筋肥大を優先するなら、筋肉にはできるだけ強烈なダメージを与え、筋肉を傷つけたあとは栄養と休養をしっかり与える。これが筋発達反応を起こし、発達を継続させることになるのだ。筋肉に強烈なダメージを与えるトレーニングテクニックは数多くあるが、セット間の休憩時間を短く制限するだけでも、筋肥大を促す条件を満たすことができる。
例えばセット間の休憩を60〜90秒に制限してみる。短い休憩時間で次のセットを開始すると、テストステロンや成長ホルモンをより早く分泌させることができるとされている。これらのホルモンはアナボリックホルモンであり、筋肥大には欠かせないのだ。
多関節種目を盛り込む
全身の筋肉をまんべんなく発達させたいなら、多関節種目をワークアウトに盛り込むことは必須だ。多関節種目がどうして有効なのか。それは、多関節種目によって体内のホルモンの反応を活発にすることができるからだ。つまり、多関節種目は一度に複数の筋肉を刺激するだけでなく、テストステロンや成長ホルモンなどのアナボリックホルモンの働きを活性化するため、筋発達しやすい体内環境をつくることができるのだ。
多関節種目では複数の関節が動く。だからひとつの種目で複数の部位を刺激することができる。そういう意味ではとても効率がいいと言える。例えばスクワットは多関節種目の代表格だが、スクワットよって刺激を受ける筋肉は大腿四頭筋、殿筋、カーフなどだ。これだけ広範囲の筋肉をひとつの種目で刺激することができるので、トレーニング時間に制限がある人にとっては特に有効と言えるはずだ。
代表的な多関節種目としてスクワット以外にもベンチプレス、デッドリフトがある。これら3種目は「ビッグリフト」とも呼ばれていて、昔から多くのアスリートたちに行われてきた。この「ビッグリフト」3種目を普段のワークアウトにぜひ取り入れてほしい。例えば次のように組み込むといいだろう。
スクワットやデッドリフトなどの多関節種目はアナボリックホルモンの働きを活性化するため、筋発達しやすい体内環境をつくるのに役立つ。
文:Jack Nathanson, CSCS 翻訳:ゴンズプロダクション
提供元・FITNESS LOVE
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