ウエイトトレーニングに励む私たちにとって、全身の筋肉をバランスよく極めたいという願いは誰にだって共通している。それなのに、トレーニングを続けていくと、得られる結果は人それぞれだということが分かってくる。人によって差が生まれる理由は何か?
体質が異なる、ジムに頻繁に通えない、ワークアウト時間に制限がある、ワークアウト内容が違うなど、さまざまな理由があるわけだが、トレーニング結果を他人と比較したところで意味がない。肝心なのは、現在のトレーニングが自分に最適であるかどうか。つまり、自分が持っている能力を最大限に発揮できる内容で、効率よく筋発達を望めるトレーニングを行っているかどうかだ。
メタボリックダメージとメカニカルファティーグ
トレーニング用語の中にメタボリックダメージとメカニカルファティーグという言葉がある。メタボリックダメージを直訳するなら「代謝的被害」、メカニカルファティーグは「機械的疲労」といったところだ。実は、この2つの言葉の先には筋発達があり、この2つを得るためにウエイトトレーニングがあるのだ。
メタボリックダメージ
ウエイトトレーニングを行って筋肉に負荷をかけると、筋中にある収縮タンパク質が傷つく。収縮タンパク質は筋肉を構成する元である筋原線維のことで、筋肉が刺激を受けると、収縮性のある筋原線維が収縮して出力が行われる。
メカニカルファティーグ
収縮タンパク質が傷つくと、やがてメカニカルファティーグが起こる。それによって筋線維1本1本が肥大する反応が起こり、これが結果的に筋肥大へとつながるのだ。ちなみに、メカニカルファティーグが起こるのは、運動によって筋線維が傷つき、筋線維の中に蓄えられていたATP(アデノシン三リン酸)が消費されて枯渇し、収縮タンパク質が収縮できなくなったときである。このように、筋肉を発達させるには、メタボリックダメージとメカニカルファティーグの両方を起こすことが条件となり、この2つを実現させる要素を備えたウエイトトレーニングこそが筋発達には不可欠ということなのだ。
やっかいな適応能力
ただ、問題になってくるのは私たちに備わっている適応能力で、これがあるために筋肉は一定の刺激に対して慣れてくるようになる。刺激に慣れてしまうと、筋肉は毎回のワークアウトでメタボリックダメージやメカニカルファティーグを起こしにくくなり、筋発達の条件を満たせなくなってしまうのだ。そのため、選択種目、トレーニング強度、テクニックなどを定期的に入れ替えて、ワークアウトにバリエーションを持たせておく必要がある。
筋発達を継続させたいなら、ワークアウト内容を少しずつでかまわないので変化させよう。そのためにもいくつかのバリエーションを用意しておきたい。では、具体的に何をどう変えたらいいのだろうか。