月平均受注額5千円 クラウドソーシングの世界(上)過酷な現実はこちら
専業デザイナーは制作物を「分ける」
利用にあたって、専業デザイナーが行うべきこと。それは「切り分け」です。具体的には、制作物の「ブランド」と「品質」を、既存クライアント向けのものと、クラウドソーシング向けのものに「分ける」ことです。
まずブランド面について。
多くの専業デザイナーは、定期的に仕事を発注してくれるクライアント(デザイン会社など)を、何社かお持ちかと思います。
そのクライアントが、クラウドソーシング内で、自分の名前をみつけ、自社の発注額より、安い金額で仕事を受けていたら、どう思うでしょうか。これまでの良好な関係性が崩れる。クラウドソーシング経由での発注に切り替える。そういった事態に陥るのではないでしょうか。
つまり、自分の「ブランド」価値が低下してしまうのです。
自社製品(サービス)同士の競合を「カニバリゼーション」(共食い)といいます。企業では、このカニバリゼーションを防ぐため、自社名ではなく別のブランド名で販売する「マルチブランド」戦略を取ることがあります。SoftBankとY!mobileがその一例です。この手法を適用すべきです。
クラウドソーシングでは本名ではなく、ハンドルネームを使うなどして、自分のブランド価値低下を防ぎましょう。
つぎに品質面について。
高額で発注してくれているクライアントと同等の品質のものを、安価に他者に提供するのは、クライアントに対し、失礼ではないでしょうか。
よって、「修正は1回まで」などの条件を付け、発注額に見合った品質のみを担保する。手抜きではなく、自分の「原価」を意識し、割ける時間内で、品質を担保できる案件にのみ参加する。そういったことを心がけるべきでしょう。
新人デザイナーは、販路拡大ツールとして活用する
新人デザイナーは、クラウドソーシングを、販路「拡大」ツールとして活用すべきでしょう。
デビューしたての新人デザイナーは、クライアントを持たず、営業手法も知りません。販路が無いのです。
よって、対策は「販路拡大」策となります。販路を広げるため、自分が目立つようにする。知名度をあげる。そのためには、ブランド名は複数ではなく、単一のものを使う。上述の「専業デザイナー」の戦略とは逆に、「シングルブランド戦略」を取ります。
具体的には、クラウドソーシングの表示名、SNSのアカウント、自身のウェブサイト(ポートフォリオサイト)等の「名前」を統一します。本名の方が望ましいでしょう。クラウドソーシング内で受注できなくても、提案を見て興味をもった企業が「名前」で検索してくれる。結果、自分のウェブサイトが表示されれば、直接受注につながる。そういった可能性が高まります。
クラウドソーシングを「販路」だけはなく、販路拡大のための、プロモーションツールとして使うわけです。