酸性化した海洋を正常に戻すコンブの力
コンブはそんな海洋中で、光合成を行い二酸化炭素を消費して酸素を作ってくれます。これは海洋の酸性化を抑制する働きがあるだろうと言われてきました。
しかし、それはどのような状況で、どの程度の効果を持つのかはまだ明らかではありません。
そこで今回の研究チームは、海洋酸性化緩和戦略を実施する前に調査するべきだろうとコンブについて研究することにしたのです。
対象とされたのはジャイアントケルプ(学名: M. pyrifera、和名: オオウキモ)です。
ジャイアントケルプは非常に大きく成長するコンブで、特に海面近くの上部は非常に成長が早く、この植物が生える場所はケルプの森と呼ばれています。
調査を行ったところ、ケルプの森周辺の海水は酸性度が低く、また日中に比べて夜間の酸性度が低いことがわかりました。
これは意外な結果です。コンブを含め植物は日中は光合成を行いますが、光のない夜間は呼吸を行います。
そのため夜間の酸性度は上がると考えられていたのです。
この原因は、カリフォルニアの沿岸部では、日中の温度差によって海底の低酸素の水が上昇してきたためではないかと研究者は考えています。
こうした温度差による流れによって夜の酸性度も低く保たれている可能性があります。
これによって、ケルプの森の中では、森の外の海と比べて全体的に酸性度の低い環境が作られていたのです。
しかし研究によると、ケルプの森では水面に近い場所では酸性度が低くなっていますが、その効果は海底までは及んでおらず、海底で生活するサンゴやウニ、貝類など海洋の酸性化に敏感な生物たちにはあまり恩恵がないようでした。
このため、コンブの樹冠に生息する生物たちは海洋酸性化緩和の恩恵を受ける可能性が高いということを研究では結論づけています。
参考文献
zmescience
提供元・ナゾロジー
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