近年地球温暖化とともに問題になってきているのが、海洋の酸性化です。

海が二酸化炭素を吸ってくれているという話しはよく聞きますが、そのせいで海の酸性化が進みカルシウムを骨格とする海の生き物たちに悪影響を及ぼしています。

しかし、この問題を馴染み深い食べ物が救ってくれるかもしれません。

7月22日にオープンアクセスジャーナル『ScientificReports』に発表された研究では、海洋酸性化の緩和にコンブが貢献していることを報告しています。

目次
酸性化する海
海洋の酸性化メカニズム
酸性化した海洋を正常に戻すコンブの力

酸性化する海

海の酸性化が「コンブ」で止まるかもしれない
(画像=今回の研究の舞台となったカリフォルニアの海。 / Credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

地球温暖化や二酸化炭素濃度の上昇などの問題に対して、海が二酸化炭素の多くを吸い取ってくれているという話は聞いたことのある人が多いでしょう。

海はその表面から二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化炭素濃度の低下に貢献してくれています。

しかし、人間の産業活動による二酸化炭素の排出は年々増加しており、産業革命以降、海洋の酸性度は30%も上昇しています。

これはもちろん海が酸の海になってしまうというほど大げさな話ではありませんが、炭酸カルシウムの骨格や殻をもつ生物(カキ、サンゴ、一部のプランクトンなど)に悪影響を及ぼします。

なぜなら海洋の酸性化が進むと、水素イオンが増え、炭酸イオンの濃度が下がり炭酸カルシウムの殻を形成することが困難になるためです。

海洋の酸性化メカニズム

海の酸性化が「コンブ」で止まるかもしれない
(画像=海洋が参加するメカニズム。 / Credit:気象庁、『ナゾロジー』より引用)

そもそも海が酸性化するというのはなんなのでしょうか?

酸性とは、溶液中に水素イオンが増えた状態を言います。これは二酸化炭素(CO2)が溶液に溶けた場合に発生します。

例えば、酸素が水に溶けても水素イオンは増えないので、液体は中性のままです。

では海の水はどうやって酸性化していくのでしょう?

大気中の二酸化炭素は、海面を通じて大気と海洋の間を活発に出入りしています。海洋中に溶けた二酸化炭素(CO2)は炭酸(H2CO3)になります。

溶液に溶けた物質は、イオンになるという話しを聞いたことがあると思いますが、この炭酸イオンは水の中に溶けているとき水素イオン(H+)と炭酸水素イオン(HCO3–)に分かれています。

大気中の二酸化炭素が増えると、海洋に溶けたまま水中に残る水素イオンが増えて行くため、だんだん酸性に変わっていってしまうのです。