モロッコがスペイン・カナリア諸島近海で鉱物資源の発掘調査開始
Juergen Sack/iStock(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

スペインは天然ガスのロシアからの依存は少なく、これまでアルジェリアからの供給に多く依存して来た。ところが、アルジェリアのライバルであるモロッコからの圧力で、スペイン外交は急転換。冷却していたモロッコとの関係回復に動いた。

それがアルジェリアの癪に障ってスペインとの関係が悪化。アルジェリアはイタリアへの供給に重点を移す意向を表明。それに乗じて早速イタリアのドラギー首相がアルジェリアを訪問するという出来事があった。

モロッコがスペインの意表を突く

4月に入ってスペインのサンチェス首相がモロッコの圧力の前にスペインの外交方針を180度転換。急遽モロッコを訪問するという出来事があった。

モロッコがスペイン・カナリア諸島近海で鉱物資源の発掘調査開始
カナリア諸島州(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

それから僅か10日後にモロッコ政府はスペイン・カナリア諸島を構成するランサロテ島とフエルテベントゥラ島の近海で鉱物資源の発掘調査を開始することを発表した。

海底1000メートルに原油、コバルト、レアアース、プラチナ、テルルなどが埋蔵していると見られているからだ。推定で10億バレル分の原油を採油できると推測されている。それは現在の原油価格から見て1000億ユーロ(12兆円)に相当するもので、モロッコの1年分のGDPに匹敵するものだとされている。

採油となった場合に、その25%がモロッコの国立炭化水素・鉱物公社(ONHYM)の利権になるとされている。

この発掘調査がスペインとの間で微妙な関係をもたらす可能性がある。というのは対岸の西サハラを含めたカナリア諸島の海域には10万9000平方キロメートルにわたり原油と天然ガスが埋蔵されていることが確認されてはいるが、スペインは環境保護を尊重するということで、その発掘調査を中断している。

スペインがこの採掘調査を実施したのは2015年のことで、それを担当したのは石油と天然ガスの最大手レプソル社だった。ところが、環境保護を優先すべきだとして環境保護団体やグリーン・ピースなどから妨害されて結局十分な調査の出来ない儘に同社は撤退したという経緯があった。

スペイン領海に非常に近いところでの開発は問題になる可能性も

今回モロッコが2か所で発掘調査に乗り出すことになっているが、それはスペインの領海にある原油と天然ガス田の延長線上にあるということ。しかも、両国が沖合350マイルまでを自国の領海と主張していることで、スペイン側から見ればモロッコの今回の2か所の発掘調査はスペインと領海権で微妙な関係にあるところである。勿論、モロッコ側から見ればモロッコの領海圏に入ると判断している。

この領海圏の主張はスペインは2015年に行い、モロッコは時を移さず同様の主張した。