これから述べることは最新の情報というわけではないし、斬新なものでもない。にもかかわらず、私たちの多くが知らなかったこと、あるいは忘れていたことを思い出させてくれるものだ。筋力アップを目指すなら、昔ながらのやり方を正しく認識しておく必要がある。そのための基礎知識を解説する。
筋力の伸ばし方
トレーニングの基本はウエイトの上げ下ろしだ。この動作を繰り返すことで私たちは筋発達を促してきた。また、用いるウエイトは少しずつ重くしていく必要があり、そうして筋肉にかける負荷を少しずつ増やしながら行うのが漸増負荷運動だ。例えば100㎏×10レップを行える人がトレーニングのたびに同じことを続けても筋肉は継続的に発達しない。負荷を増やしていかなければ、筋肉は現状維持のままだ。
そこで100㎏×10レップの運動を、翌週は105㎏×10レップで行ってみる。負荷が増えるので最初は10レップが行えなくても、やがてそれができるようになる。そうしたら次の週はさらに重量をアップして110㎏にする。こうして少しずつ負荷を増やしていくことで、筋肉は継続的に力を伸ばしていくのである。これが漸増負荷のトレーニング理論だ。
しかし、負荷を増やす方法は挙上するウエイトを重くしていく以外にもある。それは動作のスピードを変えていくやり方だ。継続的な筋発達には筋肉への負荷を少しずつ強めていけばいいのだから、例えば素早い動作でウエイトの上げ下ろしをすると、ウエイトの重さに速度が加わって負荷が増すのである。
実際にスピードがどれだけ負荷を高めるかを試してみるといい。例えばバーベルを担がずに、自重だけで体を上下させるスクワットを行う。次もバーベルを持たずにスクワットを行うが、ボトムまで体を下ろしたら、そこから垂直に跳んで着地する。どちらが体により大きな負荷がかかっただろうか。間違いなくジャンピングスクワットだったはずだ。ジャンプすることで動作に速度がつき、それが自重に加わることで負荷が増したのだ。
筋肉にとって重要なのは、トレーニー自身が何㎏の重りを持って運動を行っているのかではない。筋肉はどれだけ強い負荷がかかったかによって発達反応を起こすのだ。その負荷が重りによる負荷なのか、速度による負荷なのか、あるいはその両方による負荷なのかは関係ないのである。高重量+高速での動作は筋肉に大きな負荷をかける。大きな負荷がかかれば筋肉はそれに対して反応を示すのだ。
より多くの筋線維を参加させる
筋肉を構成している筋線維をできるだけたくさん運動に参加させることは、筋発達を促す上で重要なことだ。といっても、どれだけの筋線維が運動に参加してくるかは勝手に決まるのではなく、私たちが行うトレーニングのやり方によって変わってくる。
より多くの筋線維が運動に参加するとより大きな出力が得られ、それだけ重い重量を挙上することができる。だとすると、高重量で種目を行えば、強制的に出力レベルが高まるためより多くの筋線維が運動に参加するということになるはずだ。また、パワー系種目を適切なレップ数で行い、適切な可動域で動作を繰り返すことで、対象筋を構成している筋線維の運動参加率は上がると考えられる。
こうしてより多くの筋線維が運動に参加し、ダメージを受ければ、それを修復する過程で筋肉はより太く、より強くなっていく。これが筋発達だ。もちろんそれ以外にも十分な栄養と休養が必要になるが、トレーニングによってよりたくさんの筋線維にダメージが与えられれば、それが発達反応につながるということをしっかり理解しておこう。