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人間でも同じ仕組みが働いて子供に糖尿病が遺伝している
遺伝する病を断ち切る方法
人間でも同じ仕組みが働いて子供に糖尿病が遺伝している
マウスを用いた研究で重要になるのは、同じメカニズムを人間に適応できるかという点にあります。
人間の胚は一般に、受精から14日までならば培養して実験に使っても問題ないとされています。
そこで研究者たちは糖尿病を発症している人間の女性から卵子を採取し、男性の精子を受精させて人間の初期胚を作成。
すり潰して初期胚で働いている遺伝子の活性を調査しました。
するとマウスの場合と同じく、インスリン分泌に重要なグルコキナーゼの遺伝子が強く封印(2~3倍メチル化)されていることが判明します。
この結果は、マウスと同様の糖尿病を遺伝させるメカニズムが人間でも働いていることを示しており、母親が糖尿病である場合、子供が糖尿病になりやすくなる可能性を示します。
では病の遺伝を断ち切る方法はないのでしょうか?
遺伝する病を断ち切る方法
今回の研究により、マウスにおける後天的な糖尿病の遺伝の仕組みが解明され、同じ仕組みが人間でも働いている可能性が示されました。
糖尿病になった人間の女性やメスマウスでは卵子において遺伝子の封印を解除する役割を持つ遺伝子「Tet3」のプロ―モーター部位に封印が起きていました。
また封印の強化により、子マウスでは、インスリンの分泌に重要な役割を果たす遺伝子「グルコキナーゼ」の活性が封印されており、糖尿病にかかりやすくなっていました。
また追加の試験で、子マウスの遺伝子の主な封印が父親由来のDNAを中心に起きていることが示されます。
遺伝子の封印は卵子よりも精子で2倍起きやすくなっており、精子のDNAはメチル化された遺伝子の主な供給源になっていました。
そのため研究者たちは、女性が糖尿病の影響を受けた卵子を持っている場合、健康な男性の精子を使ったとしても子供は糖尿病になりやすくなると述べています。
研究者たちは今後、発見されたメカニズムが人間にどのように関連しているかを詳細に調べていくとのこと。
本研究では封印解除遺伝子「Tet3」から作られたmRNAを胚に注入すると高血糖の影響が防がれることも示されています。
そのため将来的には糖尿病の女性でも、遺伝子治療によって卵子の健康状態を改善させられるようになるかもしれません。
両親が後天的に獲得した病気が子供に遺伝する仕組みの解明は、次の世代を健康にするためにも役立つはずです。
元論文
Maternal inheritance of glucose intolerance via oocyte TET3 insufficiency
提供元・ナゾロジー
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