某大手外資金融機関は今年、中国企業のShein(シーイン)が世界一のアパレル になるだろうと予測している。その一方で、世界の著名アナリストたちはZARAやH&Mはこれ以上の成長は難しいとも分析している。ますますグローバル規模でシーインへの注目度や影響が高まるわけだ。今後、世界はシーインが実行する「正しいD2C」の威力をまざまざと思い知ることになる。

今年アパレル世界一へ!?幹部も登場、正しいD2Cシーイン成功の秘密を明らかにする!
(画像=PhotoTalk/istock、『DCSオンライン』より引用)

中国について、ロジカルに説明できる人材がいない

ファッション・グローバル・カンファレンスが終了した。世界のトップアナリストが参加したこのカンファレンスに僭越ながら私が登壇した理由は「中国の脅威」だった。世界がファッション産業をどんな風に見ているのかの視点について説明するとともに、彼らがいま最も注目しているシーインについて、同社幹部との面談を通じた、「シーインの強さの本質」と注目すべき点について、彼らとのディベートを再現する形で公開したい。

「今、中国についてロジカルに説明できる人間がいない」

欧米のトップアナリストは口を揃えてこう言う。確かに私自身、中国の市場を調査するため、中国在中の大手商社マンやアパレル企業の人間と幾度も話をしたが、そのほとんどが論理破綻している意見ばかりだった。

自分自身が感じる将来像や予見を語ることは悪いことではない。しかし、問題は、数字に弱く、類推と事実の境目を明確化できていない点だ。だから、所々クビをかしげるようなことをいう。
例えば、Shein(シーイン) について雄弁に語る人間がいたが、彼が見たのはたったの400枚の生産を請け負う中小の工場だった。しかも、その平均FOB価格が2ドルだという。その商社マンは、その中小工場が繊維メーカーなどと情報を共有し迅速な追加生産を行うQR(クイック・レスポンス)を行なっていたから、「シーインが中国版PLM*」をつかって、データベースマーケティングでQRで追加を1週間で行っている」というわけだ。
PLM: 製品の開発・設計・製造といったライフサイクル全体の情報をITで一元管理し、収益を最大化していく手法

少し考えれば、その工場は、たったの800ドルの仕事しかしておらず、シーインの売上高を1兆円とするなら、0.0000000000001の話をしていることが分かっていない。

私たちのように、ロジカルシンキングの訓練を徹底してやってきた者は、一つ「これはおかしいな」と感じると、全ての主張に対して信憑性が持てなくなる。
「私はアパレル産業は詳しいです。アパレルは理屈だけじゃなく、感性が大事だから論理では説明できないのです」を殺し文句にしている人も業界には多いが、グローバルの1兆円企業はすべてデータベース・ドリブンが常識だということさえ分かっていない。いまだに大御所が「来年の傾向は、、、」などと宣っているから、日本のアパレル産業は世界から無視されるのだ。

今日は、世界が世界のファッション産業をどのように見ているのか。また、謎の中国企業シーインのトップに近いスポークスマンとのやり取りについてお話ししたい。

日本は完全無視、世界は中国を脅威に感じている

今年アパレル世界一へ!?幹部も登場、正しいD2Cシーイン成功の秘密を明らかにする!
(画像=『DCSオンライン』より引用)

さて、冒頭のカンファレンス開催に先立ち、欧米のトップアナリストたちと本番前に徹底したディベートを行った。その時、印象的だったのは、「例えば、日本では、、」と日本の話をはじめると、彼らは「日本についてはユニクロで十分だ。あとは、どうでも良い」と言う点だった。彼らが日本のアパレル産業に全く興味がないのは明らかだった。

私に白羽の矢が立ったのは、「私たちはシーインの幹部と直接話をする機会を得て、彼らの主張に反証できる人間を探していた」からだという。日本市場の専門家としてではなく、中国市場、それもベールに包まれたシーインの本質を語れる人間として私は招聘されたわけだ。

これ以上は守秘の壁に守られその詳細を語ることができないのだが、世界から隔絶された日本の的外れな声、例えば、「OMOやメタバースで売上10%アップだ」などという主張をあちこちでみると、論理破綻した局所的主張を繰り返す日本市場が、世界から無視される理由もよく分かる。

考えてみて欲しい。毎年日本国内だけで倍以上の供給を行い、ますます縮小する日本がすべきことは、「OMO戦略」でなく、余剰在庫に在庫税を課し、作りすぎをなくすことだ。売り方の効率化や戦略は、その後だ。なぜこんな単純なことが分からないのだろうか。