高性能車やチューニングカーのブレーキローターを見ていると、表面に穴が開いていたり、溝が刻まれていたりします。あれは何のためにあるのでしょう?
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猛烈な高熱にさらされるブレーキ
耐熱限界を超えると恐ろしいことが起こる
猛烈な高熱にさらされるブレーキ
皆さんは、ブレーキがどうやって車を止めているか、ご存知ですか?答えは「摩擦によって、運動エネルギー(車が動いている方向への力)を熱に変換して、この熱をブレーキが吸収することで車を止めている」のです。
もっとも、最近はハイブリッド車や電気自動車などで、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して充電する「回生ブレーキ」というものもあります。回生ブレーキは、このとき発生する抵抗を利用して車を止めています。
しかし、ほとんどの車はブレーキを使って熱を発生させることで、制動力を発生していると思ってよいでしょう。
車のスピードが速ければ速いほど、ブレーキの摩擦で止めなければいけないエネルギー量が増えるので、変換されて発生する熱も増えます。短い距離で止めようとして、あるいは意図的にタイヤをブレーキロックさせようとして強いブレーキをかけても、瞬間的に猛烈な熱が発生します。
耐熱限界を超えると恐ろしいことが起こる
ディスクブレーキの場合は、タイヤと一緒に回転しているブレーキローター(ディスク)に対して、ブレーキキャリパーに内蔵されたブレーキパッドをピストンによって押し付けて、摩擦を発生させます。ドラムブレーキの場合は、ブレーキドラムの内周に対してブレーキシューを押し当てることで、摩擦を発生させます。
ディスクブレーキでもドラムブレーキでも耐熱限界が重要で、その限界を超えるとブレーキパッドやブレーキシューに含まれる摩擦材が分解してガス化し、パッドとローターの間に膜を作り、潤滑剤のような役割となってしまうことで摩擦力が非常に弱くなるのです。これを「フェード現象」と言います。
それでもなおブレーキをかけ続けると、その熱がブレーキフルードに伝わって沸騰し、気泡が発生すると適正な油圧が失われ、ブレーキが効かなくなります。これを「ペーパーロック現象」と言います。
どちらも猛烈な熱を発生させますが、排熱しにくいドラムブレーキのほうが、耐熱限界が低く、現在はディスクブレーキが主流です。
特にフロントブレーキには、車種や用途に合わせ、さまざまな熱対策が行われています。