観測史上、最年少となる原始星が発見されました。

「IRS63」と名付けられたこの星は、誕生してまだ50万年未満で、まさに赤ちゃん太陽というべきものです。

そしてこの生まれて間もない星の周りには、さらに驚きの発見があったのです。

10月7日に科学誌『Nature』へ掲載されたマックス・プランク地球外物理学研究所のチームによる論文によると、この原始星の周りで、すでに惑星形成がかなり進んでいる痕跡が見つかったのです。

この結果は、原始星が誕生する以前から、惑星の形成もすでに始まっている可能性を示唆しています。

目次
赤ちゃん太陽と原始惑星
惑星形成の証拠となる円盤の隙間

赤ちゃん太陽と原始惑星

太陽は母ではなく兄弟だった?惑星は恒星誕生よりも前から
形成されていた可能性あり
(画像=ALMAが撮影したIRS63原始星を取り巻く若い惑星形成ダストリング。 / Credit: MPE/D. Segura-Cox、『ナゾロジー』より引用)

今回観測された非常に幼い原始星「IRS 63」は、地球から約470光年離れた「へびつかい座ρ星(ろーせい)」の星形成領域で見つかりました。

推定された星の年齢は50万歳未満で、その周囲には塵とガスによるダストリング(厚い円盤)が出来上がっています。こうした星形成過程の初期段階の天体は、クラスⅠ天体と呼ばれます。

「IRS 63」は、これまで見つかってきたクラスⅠ天体の中でも半分未満の年齢で、星の最年少記録といえるものです。

若い恒星の周りに形成されるダストリングでは、塵やガスがくっついて太陽系のように惑星たちが形成されていきます。

惑星の形成についてはまだ未解明な部分が多く、この非常に若い太陽の発見は、惑星形成の謎を解き明かす鍵になると期待されているのです。

惑星形成の証拠となる円盤の隙間

太陽は母ではなく兄弟だった?惑星は恒星誕生よりも前から形成されていた可能性あり
(画像=私たちの太陽系の軌道と比較したIRS63ダストリングと隙間。 / Credit: MPE/D. Segura-Cox、『ナゾロジー』より引用)

「IRS 63」が研究者たちを驚かせたのは、誕生から50万年未満という幼い星でありながら、その周囲に形成過程の進んだ惑星があるように見えたからです。

曖昧な表現ですが、はっきりと見えるものではないため状況から推測するしかありません。

「IRS 63」の円盤は画像を見るとわかるように、縞模様になっています。つまり、円盤を作る塵やガスの中に円形の物質が少ない隙間ができているのです。

こうした状況は、他の若い星が持つ円盤にも見つかっています。

円盤に縞模様の隙間ができる原因は、生まれたての惑星が軌道上の物質を吸い寄せて降着させたためだと考えられています。

円盤の中では、最初電気的な作用によって小さな塵などがくっついていきます。これが徐々に大きい塊になっていき、微惑星と呼ばれるサイズのものになると、今度は重力の作用によって周りの物質を集めて成長していきます。

するとこの微惑星の軌道上の物質は、全部この惑星の種に掃き集められていくので、塵やガスのない隙間の領域ができあがるのです。