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線虫は目も光感知タンパク質もないのに青色が嫌い
未知の視覚システムが存在するかもしれない

線虫は目も光感知タンパク質もないのに青色が嫌い

目を使わず「未知の方法で色を知覚する動物」がいると判明
(画像=青色に照らされたエサから線虫は逃げる / Credit:ユージーンLQリー、『ナゾロジー』より引用)

線虫が色を認識できるのか?

疑問を調べるにあたりゴーシュ氏は、無色に脱色したピオシアニンや、毒がない青色染料などを組み合わせた、いくつかの実験系を組み立て線虫の反応を調べました。

そのなかで決定打となったのは、最も単純な実験でした。

線虫のエサを同じエネルギー量を持つ青色のLEDと、その他の色(琥珀色など)のLEDで照らして、線虫がどちらのエサ選ぶかを確かめたのです。

その結果、線虫は青色に照らされたエサを避け、他の色(琥珀色など)のエサを食べに向かったのです。

これは、目もオプシンも持たない線虫が青色の光を認識できることを示します。

しかし目のない線虫は、いったいどんな手段で青色を認識していたのでしょうか?

その謎解明のカギとなったのは、線虫の個性でした。

線虫たちはおおむね、青色に照らされたエサを避けますが、回避の速度にはかなりのバラツキが存在しました。

そこで研究者たちはバラツキの原因を調べるために、線虫たちの遺伝子を調べたのです。

結果、2セットのストレスにかかわる遺伝子(chtl-1とjkk-1およびF52H3.6とlec-3)が線虫の「青色嫌い」に関係していることを突き止めます。

未知の視覚システムが存在するかもしれない

目を使わず「未知の方法で色を知覚する動物」がいると判明
(画像=目やオプシンに依存しない視覚システムが存在するかもしれない / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究により、目も光を感知するオプシンも持たない線虫に、特定の色を認識する能力があると判明しました。

また線虫の色に対する反応が、ストレスに関係する遺伝子とかかわっていたことも示されました。

この結果は、盲目だった生命が光を感じるように進化する過程において、複数種類の進化の道筋があることを予測させます。

もしかしたら長い生物進化の過程の中には、目やオプシンを使う以外の「忘れられた視覚システム」が存在したかもしれません。


参考文献

WHEN A WORM AVOIDS BLUE — IT’S A BREAKTHROUGH

Eyeless C. elegans Perceives Colors: Study

元論文

C. elegans discriminates colors to guide foraging


提供元・ナゾロジー

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